既に37府県で地方独自の森林環境税がある

そもそも、森林環境保全が必要な山林を持つ自治体では、地方税として森林環境税を独自で創設しています。その始まりは、平成15年(2003年)の高知県であり、県民税の均等割に年額500円が加算されています。その後、全国の自治体に広がり、今や37府県で独自の森林環境税を作っています。 加えて、市区町村でも環境税を作っている自治体もあります。

こうした自治体では、森林環境税が2つになるので、今年度から始まる森林環境税のことを「国の森林環境税」と呼んでいます。皮肉な話です。

例えば、横浜市では、「みどり税」として、樹林地の保全などを目的に、900円を個人住民税に上乗せして徴収しています。更には、神奈川県も、「水源環境保全税」として住民税均等割に300円の上乗せ、プラス、住民税所得割に0.025%の上乗せをしています。ということは、神奈川県横浜市の納税者は、地方税の環境税だけでもダブルで、1200円以上の住民税上乗せ分を支払っている上に、来年度からは国の森林環境税も加わって、トリプルで環境税を払う状況になっています。

日本経済新聞より

増税で環境はよくならない

こうして多くの自治体で、独自の環境税を作り、住民税に上乗せをしてきているわけですが、森林環境は良くなっていません。

だからこそ、森林環境保全のお金が足りないとして、国まで森林環境税を始めたわけですが、こうした状況を鑑みると、増税しても環境はよくならないということが、お分かりではないでしょうか。

ちなみに、埼玉県では、2005年に「埼玉県みどりの環境税」が検討されましたが、結果として新税を導入せず、代わりに自動車税の一部を「彩の国みどりの基金」として積み立てて環境保全のために活用しています。本当に環境が大事なら、安易に増税に走るのではなく、今ある予算から捻出できるはずです。

こうしたことを背景に、私は森林環境税創設の意見書が上がった頃から反対でした。

とはいえ、この森林環境税は国税ですし、法律で定められてしまった以上、目黒区だけ施行しないわけにはいきません。法律施行のための条例改正の際に否決され、条例改正ができなかったとしても、国で決まったことを地方で覆す方法はなく、制度の狭間に陥るだけです。なので、不本意ながら条例改正には賛成しました。

森林環境税そのものについての指摘は、このくらいにしておきます。

家計で使えるお金は30年前より1割も減っている

一方で、区民の負担という視点に切り替えましょう。国民負担は年々増加しています。国税庁データによると、令和4年(2022年)の給与所得者の平均給与は458万円で、国民負担率は46.5%。30年前の平成4年(1992年)の平均給与は470万余で、国民負担率は36.0%でした。

平均給与は、横ばい若しくは若干減っているのに、国民負担率は10%も上がっています。つまりは、30年前に現役世代だった人より、今の労働者は、1割も使えるお金が減っているということです。

更には直近の物価高や円安で、家計の負担がどんどん増え続けている現状において、森林を持たない都会で、納税者個人に更なる負担を強いることには、合理性がないと考えます。

既に地方税で森林環境税を作っているところも同じです。我がまちの市民に、二重で森林環境税を負担させる必要があるでしょうか。