歴史学者が古代史の謎に切り込もうとする時に立ちはだかるのが未解読の言語で綴られた古文書の存在だ。オルタナティブメディア「Ancient Origins」の記事では古代史研究の行く手を阻む未だ解読の糸口すらつかめていない謎の文書のトップ10が紹介されている。前編となる本稿では興味深い5つの文書を解説したい。
■ヴォイニッチ手稿
1912年にポーランド系アメリカ人のウィルフリッド・ヴォイニッチによってイタリアで発見されたのが彼の名にちなんで名づけられた「ヴォイニッチ手稿(Voynich Manuscript)」である。
歴史上最も複雑かつ謎めいた文書の1つとして知られるヴォイニッチ手稿は西暦15世紀初頭に遡る羊皮紙写本で、異世界の植物、占星術の図、未確認のシンボルの複雑なイラストで飾られた約240ページで構成されており、すべて未知の文字で書かれている。その内容は謎に包まれており、未解読のまま何世紀にもわたって言語学者、暗号学者、学者を困惑させてきた。
テキストはいくつかのセクションに分かれており、おそらくハーブ、天文学、生物学、薬学の主題に関連しているが、その正確な意味は謎のままだ。原稿内のイラストには、既知の植物図鑑には載っていない、幻想的でありながら複雑な植物が描かれている。占星術図と天文図も同様に謎めいていて、既知の天文パターンと一致しない黄道帯のような図や天体の配置が示されている。
さまざまな言語分析、暗号分析、統計分析を利用して、テキストを解読するための無数の試みが行われてきたのだが、今になっても決定的な糸口はつかめていない。その起源、目的、作者についてはさまざまな理論があり、でっち上げやフィクションであると指摘する者もいれば、暗号化された知識や失われた言語が保存されている可能性があると示唆する者もいる。何度も学術研究の対象となったにもかかわらず、ヴォイニッチ手稿は今もその神秘性を保っており、その未解決の謎に魅了された研究者や愛好家の想像力を刺激している。