労災認定とは

 今回の労災認定について日立造船に見解を聞いた。

「亡くなられた故人に対しあらためてご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族の皆様に謹んでお悔やみを申し上げます。誠意を持ってご遺族に対応させていただきたいと考えております。また、今後二度とこのようなことが起こらぬよう、再発防止に向けた取り組みを進めていく所存でございます」

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「いわゆる労災、『労働災害の認定』を受けるということは、人を雇っている者・法人が加入する労働者災害補償保険法に基づき、『業務上の災害』であることの認定を受け、国(行政)から給付金を得るための手続きです。この『労働災害の認定』を得るためには、業務を行っていたことで発生した災害であること、業務に関係して発生した災害であることが条件です。たとえば、工場で作業中に指を挟んで骨折したとか、営業で外周りの際に交通事故に遭ったような場合に、補償を受けるわけです。

 今回は、(1)自殺が過労死と認められ、(2)この過労死が労災と認められたということです。まず、(2)「過労死」が認められるためには、直近1カ月で100時間の労働時間などがあった場合に脳疾患や心臓疾患により死亡したことが必要です(いわゆる『過労死ライン』と呼ばれています)。次に、『自殺』が『過労死』と認められるためには、業務による強い心理的負荷により精神障害が生じていて、この精神障害が業務以外の事情から発病したものではないことが必要です。おそらく、長時間の労働が重なったり、叱責などが原因の精神的ストレスによって精神的障害が生じたのでしょう。

 また、国(行政)が自殺が過労死としての労災と認めた場合、われわれ弁護士は、司法である裁判所に対し、この『労働災害の認定』、すなわち業務によって発生した災害であると認められたことを理由に、雇い主に対する損害賠償請求を行います(申立の順番が前後することはありますが)。国(行政)が労災(要するに、会社が悪い)と認めたわけですから、雇い主に対する損害賠償請求が認められやすくなるからです。」

 大手電機メーカー部長はいう。

「大企業だと所属する部署や上司によって労働環境がまったく違ってくる。部署によってホワイトだったり、長時間労働や上司のパワハラが常態化するブラックだったりして、まるで別の企業であるかのように違ってくる。日立造船のような歴史が長い重厚長大型の製造業では、いまだに従来型の日本企業の風土が残っているところも少なくなく、部長や課長は自身の持ち場で絶対的な存在になり、パワハラ的な言動があっても外部から口を挟みにくい。さらに海外ともなれば外からの監視の目が行き届きにくくなることも、今回の不幸な事態につながったと考えられる。

 亡くなった方は入社3年目のときにタイへ赴任したことになるが、メーカーの技術職で3年目というのは経験・知識面ではまだまだの状態で権限が小さいものの、新人的ポジションを脱して戦力として力を発揮することを期待され始める時期でもある。それゆえに会社から海外赴任を任されたと想像できるが、海外で言葉が通じる現地スタッフも少ないなかで未経験の業務まで任されていたとすれば、会社として業務の割り振りやフォロー体制が適切であったのかが問われる。また、大企業の3年目であれば『上司が全て』という状況になりやすく、上司に恵まれなかったというのは不運としかいいようがない」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・TOCANA

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