亜熱帯地域の温暖な気候に恵まれ、広大な海に囲まれている沖縄県。これらの特性を生かして、各地で多様な作物が生産されています。石垣牛や宮古牛、アグー豚に代表されるブランド牛・豚をはじめ、黒糖の原料となるさとうきび、島野菜や南国のフルーツなどを、現地や日本各地にある沖縄料理店で食したことがある人は多いでしょう。

この他にもまだまだ知られていない農産物が多数あり、今後沖縄の名産品となるよう生産や商品開発に奮闘している生産者たちがいます。その中でも希少性が高く、沖縄の「食」の未来を創造する食材を「OKINAWA CLOSE-UP FOODS(沖縄クローズアップフーズ)」として、多くの人に広める活動が2024年1月から始まりました。沖縄でコーヒー、バニラ、バナナを生産・加工する生産者たちを訪ねました。

沖縄らしいコーヒーの味を追求する

希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=『中山コーヒー園』の焙煎体験。自身で焙煎を行った豆をミルでひき、ペーパードリップでいれて飲みます。、『Business Journal』より 引用)

これまでコーヒーの栽培地と消費地は離れていましたが、沖縄は栽培から消費までを一貫して行うことができる世界でも珍しい土地です。2020年の聞き取り調査によると沖縄県内のコーヒー栽培者は約50人いると言われており、最高品質の証であるスペシャルティコーヒーの認定を受けた生産者も3軒に達しています。沖縄本土で10年以上前からコーヒー栽培に取り組む2軒を紹介します。

希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=コーヒーに魅せられて栽培を始めた『中山コーヒー園』の岸本辰巳さん。,『Business Journal』より 引用)

沖縄島北部の名護市にある『中山コーヒー園』は標高140メートルの森の中にあります。岸本辰巳さんは2013年にコーヒーの苗木約300本を植えて、現在ではティピカ、イエローブルボン 、ムンドボーノを中心に13種類、約2000本を栽培しています。コーヒーはある意味デリケートな作物で、水分を好むけれど排水も大事。傾斜のある同園の土地は水はけが良く、栽培に適しているそうです。ただし台風の多い沖縄ではその対策が必須で、木1本に対して支柱2本を立てたり、防風のための木を周囲に植えたりしています。

希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=同園内で栽培されていたコーヒーの木には実がつき始めていました。,『Business Journal』より 引用)
希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=コーヒーの焙煎体験で焙煎の難しさを知ることができます。収穫時期には収穫体験も可能。,『Business Journal』より 引用)
希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=自身で焙煎したコーヒーと園内のカフェで提供しているスイーツ。コーヒーの実のシロップ漬けが添えられていました。 ,『Business Journal』より 引用)

収穫した実は、2週間をかけてナチュラル(実をそのまま乾燥させてから脱穀する方法)で精製しています。「ウォッシュド (外皮・果肉を取り除いた後、水中で粘質物を取り除き、乾燥させてから脱穀する方法)で精製すると、スッキリとした味わいになりますが奥深さが出ない。農家ごとの個性を出しやすいのでナチュラルにこだわっています」と岸本さんは話します。また、同園は、コーヒーの収穫&焙煎体験を行っている他、無農薬栽培の強みを生かしてコーヒーの皮や果肉、葉を使ったお茶も販売し、収益化につなげています。「コーヒーは嗜好品なので、今までにない味を提供するのもサービスの一つと考えています。(コーヒー三大原種の一つで)現在はほとんど飲まれていない、希少性の高いリベリカ種の栽培にも取り組んでみたいです」と岸本さんの挑戦は続きます。

希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=ネットを張ったハウス内でコーヒーの説明を行う『又吉コーヒー園』の又吉拓之さん。,『Business Journal』より 引用)

『又吉コーヒー園』は沖縄島北部の東村にあり、約3万坪の広大な敷地にキャンプ場やコテージなどを有する複合観光農園内の約5000坪の土地で、コーヒー栽培も行っています。元はバラの観光農園でしたが、農薬を使わないで栽培できるという理由から、2014年に100本のコーヒーの苗木を5万円で購入して栽培を開始。現在はイエローブルボンを中心に5品種、約2000本を手がけるまでになりました。台風で受ける風の影響を半分にするためにネットを張ったハウスを2016年に設置しましたが、ネットによる遮光が強すぎても生長に良くないと分かり、試行錯誤しながら栽培を進めていると同園の又吉拓之さんは話します。また、これまでの単収を上げる方針から、今後は栽培本数を増やして全体の収量を上げる方針に切り替えて取り組んでいくつもりです。

希少価値があり、沖縄の「食」の未来を創造する食材「OKINAWA CLOSE-UP FOODS」
(画像=同園内で行われていたナチュラルでの精製。数週間乾燥させています。,『Business Journal』より 引用)

精製方法はナチュラルを採用。3〜4週間乾燥させた後、水分値を安定させるためにコンテナハウスで2か月寝かせて、オーダーが入ってからカフェでの在庫をみながら脱穀・選別して焙煎しています。又吉さんによると、この方法を取ることで酸の質が変わり、他にはないフレッシュな感じになるとのこと。同園はウォッシュド、ハニー(外皮・果肉を取り除いた後、粘質物を残した状態で乾燥させて脱穀する)のどちらの精製も行うなど、さまざまなことに実験的に取り組んでいます。「ここは、沖縄のおいしいコーヒーの可能性を探るラボとしても機能しています。まだ嗅いだことのない香り、まだ体験したことがない味わいがあるのではないかと期待を込めて、毎年収穫しています」と又吉さん。沖縄コーヒーの可能性はどこまで広がるのか、今後が楽しみです。