■直接税:政府に金銭を納める義務 ■債務:将来の支払いを前提に、その支払いのための税収を伴わない現在の政府支出(国債など) ■インフレ:「印刷貨幣」、つまり正貨(金、銀などの商品)を超えて貨幣と信用を人為的に拡大すること
増税は市民からの反発が大きいので難しいため、歴史上、政府は銀行を使ってインフレをおこすことで戦費を賄ってきたのです。
この政府と中央銀行の関係は、アメリカの独立革命のすぐ後の1812年の戦争でも現れています。
当時の背景については下記のnoteでも少し書いています。
今回は、その「1812年の戦争」が、「銀行制度」に与えた影響についての論文を一部意訳して紹介しようと思います。
論文は、アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」のHPに2024年2月27日掲載のJoshua Mawhorter氏の「The War of 1812 and the Panic of 1819: The Unholy Alliance between Government and Banking(1812年の戦争と1819年のパニック:政府と銀行の邪悪な同盟)」です。
※太字は筆者です。
The War of 1812 and the Panic of 1819: The Unholy Alliance between Government and Banking | Mises Institute
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1812年の戦争と1819年のパニック:政府と銀行の邪悪な同盟「戦争は一般に、アメリカの通貨・金融システムに重大かつ運命的な結果をもたらしてきました」
マーレー・N・ロスバード『アメリカにおける貨幣と銀行の歴史』より
政府には以下の3つの課税方法があります。
■直接税:政府に金銭を納める義務 ■債務:将来の支払いを前提に、その支払いのための税収を伴わない現在の政府支出 ■インフレ:「印刷貨幣」、つまり正貨(金、銀などの商品)を超えて貨幣と信用を人為的に拡大すること
さらに歴史は、
「政府権力の拡大、戦争、銀行の法的特権と免責の拡大」の間に密接な関係があることを示しています。
これらは現実に、互いに補強し合っています。
戦争には歳入が必要ですが、市民から直接税金を徴収するのは難しいです。
そのため政府はしばしば銀行に、インフレによって貨幣と信用を拡大する能力を提供したり、銀行の正貨支払いの停止を可能にします。つまり、顧客からの要求されても、銀行は金や銀での返済を拒否できるようになります。
その一方で、銀行は政府から法的保護を受けることに大喜びします。
なぜなら、これによって契約上の義務の履行を拒否し、詐欺罪に問われることなく人為的に事業を拡大することができるからです。政府が彼らをその結果から救うという約束で、です。
このようなことは、アメリカの歴史を通じてしばしば起こってきたことです。
1812年の戦争のために米国政府がとった金融政策は、いくつかの結果をもたらしました。その最たるものが、米国初の全国的な好況と不況のサイクル、1819年のパニックでした。
戦争中の1814年、アメリカは金本位制を放棄し、税収ではなく貨幣と信用のインフレ拡大によって戦費を賄いました。
この時点では、アメリカはまだ「連邦準備制度理事会(FRB)のような」近代的な中央銀行を持っていませんでしたが、同様の金融政策は同様の結果をもたらしました。
アメリカは金本位制を放棄し、銀行に特別な法的特権と免責を認め、金で換金できる以上の不換紙幣を印刷し、正貨の支払いを停止しました。
その結果、1819年のパニックに加え、国内物価は25%上昇し、輸入は70%増加しました。
アメリカ政府の役割について、マレー・ロスバードは『銀行の謎』の中で次のように述べています。
米国政府は、増大する戦争債務を購入するため、銀行の数を大幅に増やし、銀行券や預金を増やすことを奨励しました。中西部、南部、西部の各州のこれらの新しい無謀なインフレ銀行は、国債を購入するために大量の新券を印刷しました。そして連邦政府は、これらの紙幣を使ってニューイングランドで武器や製造品を購入しました。