キッチンから出る生ごみをアップサイクルする仕組み

ーー高野さんがデザインされる循環システムについて教えてください。

高野:メリオールデザインの食器を開発、販売するなかで、黙っていたことがあります。

洗い流しに使う水を減らせます。お湯を使っていたなら、お湯を沸かすエネルギーも減らせます。海を汚さない、CO2排出を削減する、洗う人の手も荒れない……良いことずくめだと言ってきました。

しかし、洗剤を使わない最大のメリットは、排水に界面活性剤を含まないこと。排水とそこに含まれる残飯を再利用できることなんです。

ーー水資源だけではなく、フードロスの問題にも寄与するということですか?

高野:食べ残した食品は、生ゴミとして捨てられます。あとはディスポーザーで砕いて下水に流して処分されます。……ビニール袋に生ゴミをまとめて、ゴミ捨て場に持っていくこと、当たり前でしょうか?

さらに、その生ゴミは、誰かがトラックで回収して、燃やします。この使われるエネルギーはすべて「もったいない」。だけど、こうやって処理することが「当たり前」ですね。

ーーたしかに、疑問をもつ人は少ないと思います。

高野:水不足だけじゃなく、世界には食糧不足の問題があるのに、食糧を捨てています。

新しく提案するシステムでは、洗剤を使わずに洗えるメリオールデザインを使い、下水ルートの排水口とは別に、リサイクルルートの排水口をシンクに設けて洗い物をした水や残飯を流します。

そのパイプをバイオタンクに通じさせる。そして作られた栄養水を農業利用し、その水が作物を育て、また食卓に戻ってくる。野菜などを生産する植物工場や、バイオガスを作るプラントへ運び、さまざまな用途に変換しようというシステムです。


「meliordesign循環システムコンセプト『TABLE to TABLE』」の概要

ーー家庭のキッチンから出る排水とそこに含まれた食べかすや生ゴミをアップサイクルするんですね!

高野:これまではゴミとして集めて燃やしていた残飯を100%リユースできます。たとえば、肥料や飼料の値段は高騰しています。だから、食肉の値段も高くなる。このシステムで集めた残飯で飼料を作れたら、最終的に食肉の価格を抑えられます。

節水をして、洗剤を使わないという技術を僕は持っている。植物工場、バイオタンクの技術はそれぞれ他の企業が持っています。全ての技術を組み合わせたら、資源が循環します。