原作者と脚本家、直接やりとりできない

 テレビ番組制作関係者はいう。

「現在ではどの局でも、原作者から『脚本は見せてもらわなくていい』と言われない限り、脚本について原作者のチェックを受けず制作を進めるということは基本的にはない。原作ものの場合、原作者と脚本家のやりとりは原作の出版社とテレビ局を介したやりとりになるので、お互いの意図がうまく伝わらないということが起きる。そして原作者と脚本家が直接やりとりしたいと要求しても、テレビ局も出版社もそれを嫌がる傾向がある。ただ、直接やりとりするケースも稀にあり、そこはケースバイケース。たとえば原作者と脚本家の意思疎通がなかなかうまくいかず、ドラマの制作進行に支障が生じかねないような状況に追い込まれれば、局としても両者に直接話をしてもらわざるを得ない。

『海猿』の件はよく知らないが、映画の場合、ドラマ以上に作品に携わる関係者の数が膨大になるので、さまざまな事情がからんでくる。なので原作者も制作サイドから『もう動いてしまっている』と言われれば、いくらその映画が原作とかけ離れた方向に向かっているとしても、口を挟みにくくなるものだ」

 別のテレビ局関係者はいう。

「こうした問題が繰り返される背景には、原作モノのドラマの場合、原作者と脚本家の間に原作の出版元である出版社とテレビ局が入るため、やりとりの過程においてお互いの意図が正確に伝わりにくいという問題がある。『セクシー田中さん』の件でいえば、原作者がここまで厳格に原作に忠実であることを要求しているという事実が、十分に脚本家に伝わっていなかったと考えられる。稀ではあるが、作品によっては脚本づくりの過程において原作者と脚本家が直接やりとりをするケースはある。だが、そうすると多岐にわたる利害関係を調整しなければならないテレビ局の制作サイドによるコントロールがききにくくなる可能性もあるため、局としては『間に入っておきたい』という事情もあるし、原作者と脚本家の意見が対立した場合の緩衝材になるという役目も発揮できる」(2日付当サイト記事より)