■家を出たものの……

 無一文で着の身着のまま家を追い出されたホセは学校を中退。魔術師をしていた義理の兄がオファーしてくれたアシスタントの仕事をありがたく引き受け、ピエロとして働き小銭を稼ぐようになった。この頃から、本や脚本、詩に興味を持つようになり、創作活動を開始。一方で、酒を浴びるように飲み始めたのもこの頃のことだった。

 1996年、ホセはエイドという女性と結婚。しかし結婚生活は2年しか続かず、エイドは離婚後、ホセとの間にもうけた2人の娘を連れてアメリカに移住してしまった。妻に去られ、愛する娘たちとも会えなくなったことを嘆き悲しんだホセは、重度の鬱病を発症。ますます酒に溺れるようになり、薬物にも手を出すようになった。

 離婚後、鬱を患いながらも、ホセはリディア・サンチェスという女性と出会い、同棲を開始する。リディアはホセが逮捕された後、裁判の証言台に立っている。「ホセは黒魔術にハマっていた。牛の舌やハーブを使い人を呪う黒魔術儀式を行っていた。呪う相手は元妻など彼を裏切った人たちだった」「獣姦ポルノビデオを見るように命じられながら、SMセックスを強要された」と証言。また「セックスの前後には必ずペニスを洗っていた」「手を繰り返し洗う癖があった」と強迫性障害だったことや、「酷いモラハラ男で、別れたいと言うと”お前がいなくなったら俺は自殺する”と脅迫された」など、壮絶な同棲生活だったことを赤裸々に語っている。

「あまりにも異常な言動についていけない」「もう耐えきれない」とリディアが去ると、ホセは詩や脚本執筆にますますのめり込むようになった。さらに、自分の作品をプリントアウトして製本し、通りで配布するようになった。もちろん業界人の目にとまることを狙っての行為だったが、そんなラッキーなことはそうそう起きない。いつまでたっても芽が出ないホセは、次第に「自分は有名な作家だ」「著名な詩人で、売れっ子脚本家なのだ」と妄想するようになっていった。