“昭和×Z世代”の強み
同ドラマでは阿部演じる主人公が、1986年から2024年の現代へタイムスリップする。昭和おやじの不適切発言が令和の空気をかき回すコメディだ。驚くべきは今や死語の“NGワード”が放送で次々に出てくる点。「ブス」「ケツバット」「チョメチョメ」など昭和では当たり前だったが、放送中に2回も不適切表現へのお断りテロップを入れるほど、今のテレビでは危ない言葉たちだ。それでもZ世代には新鮮に映り、令和のコンプライアンス大合唱に戸惑う中高年には懐かしく思えたようだ。
具体的に誰が見たのかをチェックしよう。昭和を知らないT~1層(男女13~34歳)で高く、特にMT(男性13~19歳)で突出した。そして親世代も好調だが、特に昭和の価値観で育った3層(男女50~64歳)で高くなった。

実は同ドラマと視聴者層のパターンが酷似する番組があった。昨年までに3回放送された日本テレビの『ダウンタウンvsZ世代』だ。昭和世代とZ世代が、今では考えられない昭和の常識を収めたVTRを見てトークするバラエティだ。あり得なくてケシカランが面白かった昭和のテレビ、コンプライアンスを無視したお笑いの芸風、ヤバいかもしれないが力強い時代風潮などが次々と登場した。
高い個人視聴率を支えたのはT層から3層(13~64歳)と幅広い。しかも企業の40~50代管理職がよく見ているなど、コンプライアンスでがんじがらめの今が相対化されているといえよう。ただし4層(65歳以上)はあまり高くないのはテレ朝『相棒』と真逆だ。
『不適切にもほどがある!』は、昭和が令和と触れ合うという意味で『ダウンタウンvsZ世代』に通じるものがある。結果として視聴者層も酷似した。やや異なるのはドラマゆえか、「ドラマ好き」や「女子高生」により多く見られた点である。