食べるのはつくってから3~6時間後
同じように、ごはんにかけるふりかけでも、「のりたま」と「混ぜ込みわかめ」では、商品設計が違う。前者は主に温かいごはん、後者は主におにぎり用というのもある。
「混ぜ込みわかめ」の商品パッケージには、「あったかごはんに混ぜるだけ」が全商品に明記。さらに半数近くの商品には「大きめ具材で、冷めてもおいしい!」の文字があった。ちなみに「のりたま」よりも塩分が多い。
「混ぜ込みわかめは、ごはんが冷めてもおいしいようにつくっています。つくったおにぎりをいつ食べるかで時間は変わりますが、消費者調査をすると3~6時間後が多いです。社内で新商品や改良品を試食する際も、ごはんに混ぜてつくって3時間は置いてから試食します」
井原幸太郎さん(マーケティング部 ふりかけチーム 係長)は、こう説明する。2009年の入社以来、10年以上商品開発に携わった後、2021年からマーケティング担当となった。
「家庭でつくるおにぎりは、固さや食べたい大きさによっても変わります。握り具合もそうですね。それぞれのご家庭ならではの味や食感もあると思います」(井原さん)

地域によって好まれる味はあるのだろうか。
「おにぎりが大好きなエリアがあり、北陸から静岡や愛知にかけての中部北陸地方です。このエリアは当社の販売する『釜めしの素』シリーズも支持してくださいます。具材はそこまで地域差がありませんが、“混ぜ込みわかめ しらす”は北日本が強いですね」(丸山さん)
30種類近くあるのは「お客の選択肢を増やす」ため
「私が最初に担当した当時は7~8品でしたが、シリーズ品も増えていきました」
こう話す丸山さんに、ここまで増えた理由を聞いてみた。
「たとえば、おにぎりを毎日持参するような中学生や高校生だと、味のバリエーションを求められます。鮭は好きな味だけど毎日では飽きてしまう、といった声ですね。
実は、初めて使うという方が一定数いて、学生さんは卒業もありますから、毎年ユーザーの約3分の1は入れ替わっています。たとえば『あったかごはんに混ぜるだけ』のメッセージも<前も伝えたからいいでしょう>ではなく、新しいお客さまと向き合う姿勢でいます」(同)
2018年に発売した「和風ツナマヨ」がヒットし、2021年には「香るごま油味」も投入した。ほかに“味めぐり”と題して、「鯛めし風」や「うなぎひつまぶし風」などもある。

「和風ツナマヨは、コンビニおにぎりの人気商品ですし、香るごま油味は韓国のりが食卓に浸透したのも意識しました。一方、味つけでは、たとえば鯛めしは淡泊になりがちなので、商品開発部が試行錯誤の末、ゆずで引き立てるようにしています」(井原さん)
さまざまな味があるのは消費者にとって便利だが、各社の事業部を取材すると「SKU(Stock Keeping Unit=在庫管理上の最小の品目数)の視点からも商品アイテム見直しが必要」という声をよく聞く。「混ぜ込みわかめ」についてはどうなのか。
「その視点は承知していますが、お客さまの選ぶ楽しさをできるだけ優先したいですね。社内では管理が煩雑になるので喜ばない部署もありますが、全社的には一度発売した商品は辛抱強く持ち続け、あまり手仕舞い(終売)にしたがらない社風です」(丸山さん)