返金システムで消費者のリサイクル意欲を向上
リサイクル促進のためには消費者の意識向上も重要だ。しかし、環境保護の重要性をいくら並べても、自身にメリットがなければリサイクルへの積極的な意欲もわきにくい。Recykalはテクノロジーによってリサイクルの動機付けに成功した。
それがデジタルDRS (Deposit Refund System)、デジタル預り金返金システムだ。「Digital India Award 2022」を受賞するなど、インド国内でも高く評価されている。
――デジタルDRSについて教えてください。
Abhay: 消費者は製品購入に預り金を価格に上乗せして支払います。使い終わった製品のパッケージを返却すると、この預り金が返金されます。返却時に金銭的な見返りがあるため、パッケージ回収率が高まるのです。このシステムはペットボトルやお菓子の容器、アルミやガラス製のケースなど、さまざまな製品に対応可能です。
Recykalが開発したクラウドベースの印刷サービスがあるので、クラウドにアクセスすれば簡単に独自コードを印刷できます。このコードを用いれば、製品の偽造対策やリサイクル状態の追跡なども可能です。セキュリティ機能も備えており、ユーザーデータも保護しています。
――デジタルDRSが導入されることで、どのような効果が期待できますか?
Abhay: 消費者にデポジットが返金されるため、リサイクルに取り組むインセンティブが与えられます。これは、パッケージ返却率の向上とポイ捨て削減に貢献します。回収されたパッケージが適切にリサイクルされているかどうか、USIコードで確認すれば、リサイクルプロセス全体の透明性と効率性を高めることもできます。
dDRSはインドのさまざまな州で急速に普及しています。ヒマラヤ地域の巡礼地4ヵ所で行われる聖地巡礼では、巡礼者によるゴミ問題の改善に貢献しました。州規模でのデジタルDRS実施が複数件計画されており、インド全体でのリサイクル推進が期待されています。
最新テクノロジーとRecykalの今後の取り組み
インドの特筆すべき強みとして、IT分野での高い技術力があげられる。Deshpande氏もテクノロジーに深い知識と経験を持つ人物であり、Recykal社は公式サイトにあるとおり「technology-driven solution provider(テクノロジー駆動の解決策の提供者)」を名乗っている。
――AI、IoTなどの最新のテクノロジーはRecykalの事業にどのように影響を与えていますか?Abhay: これらのテクノロジーは分別プロセスの改善、物流の効率化、リサイクル業務の透明性の向上などで、ゴミの管理を革新する可能性があります。
Recykalは、将来の素材価格と需要・供給についてAIで予測を行い、回収業者に情報提供しています。回収センターではAIを用いて90%以上の精度でリサイクル可能な物が自動で分別されます。リサイクル過程での識別業務の効率が改善されるのです。
――他に、可能性を感じるテクノロジーはどんなものがありますか。
Abhay: 個人向けのトレーニングプログラムを開発すれば、消費者はシミュレーションでリサイクルを学習できます。楽しく学べるだけでなく、情報の定着率も高い学習方法です。バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)技術を活用すれば、さらなる没入型のトレーニング体験が実現するでしょう。仮想環境で環境への影響を可視化することで、適切なゴミ処理の重要性への理解を深められます。