イオンモールも取り組みに参画

幼虫は乾燥させた状態そのままで食べてもいいが、クッキーなどのお菓子に加工することもできる。さらに、ペットフードや養殖魚向けの飼料にもできる。書けば書くほど、ハエの幼虫は万能な食材であるということが分かる。

これが人類にとって有益なものであることが共有されたら、食料廃棄物は「捨てられるもの」どころか「絶大な需要のある資源」に生まれ変わるだろう。生ゴミ回収の在り方にも変化が生じるかもしれない。何しろ、これは「ゴミ」ではなく「資源」なのだから。

Entomal Biotechは、本社所在地の州政府と協力して大手小売店舗から出る食料廃棄物を引き取る事業をすでに実施している。その中には日本のイオンもあるという。これについては、後述するYanni氏のプレゼンで明らかにされたことだ。

実は東南アジア諸国ではイオンモールは広く知られた商業施設で、郊外設置型の大型店舗は休日に多くの家族連れを集めている。日本人にとっては当たり前の惣菜コーナーの寿司や日系メーカーのスナック菓子などは、現地市民に大好評だ。「寿司とはこんなに手軽に売ってるものだったのか!」とは、イオンモールを訪れた筆者の友人の言葉である。

しかし、今この記事を書いている瞬間も「余った寿司」が大量発生しているだろう。

そのような食料廃棄物をEntomal Biotechの施設で処理し、肥料や新たな食品を製造する。まさにバイオテクノロジーの極致のような事業計画である。

なお、小さじ1杯のブラック・ソルジャー・フライの幼虫は7~10日間で、1トンの食品廃棄物を100kgの動物向け飼料と200kgの肥料に変えることが可能だ。

ピッチイベントのファイナリストに

「このあと、私が向こうのステージに上がってプレゼンをします。よかったら見ていってください!」

Yanni氏は筆者にそのようなことを教えてくれた。

Yanni氏を含むSusHi Tech Challenge 2024のファイナリスト7名が特設ステージに上がってプレゼンを行う予定だったのだ。筆者がEntomal Biotechのブースに来たのは12時30分。ピッチイベントの開始は14時。かなり忙しいタイミングで来訪してしまったにもかからわず、Yanni氏は事業内容を丁寧に説明してくださった。

以下、SusHi Tech Challenge 2024の様子を一部ではあるが写真付きで取り上げたい。プレスリリースなどには書かれていない事業内容や将来の目標が、Yanni氏の口から語られた。ハエの幼虫が食料廃棄物を処理することで大幅なCO2削減に直結するということも、その具体的な内訳が明らかにされている。その上で、上記の通りイオンなどの大規模小売店舗との協力関係もすでに構築されているという。