トイレにお風呂、食器洗いに洗濯......「下水」は人が生活するなかで毎日排出している、非常に身近な存在です。しかし、下水道のシステムや処理の仕方は意外に知らないもの。私たちの生活の「あたりまえ」を作る下水道のしくみを知りたくなったら、下水道博物館に出かけてみませんか。今回は東京都にある2つの下水道館をレポート! 2つの下水道館には、アクセスや施設規模だけでない意外な違いがありました。
目次
1. 東京には2つの下水道館がある
2. 「東京都虹の下水道館」に行ってみた!
1. 東京には2つの下水道館がある

みなさんは「下水道館」という施設を知っていますか? 日本下水道協会の情報によると、全国の主な下水道広報施設は10か所。「下水道館」「下水道博物館」「下水道科学館」といったネーミングで都市圏を中心に点在しています。
そのうち東京都にある下水道館は、有明にある「東京都虹の下水道館」と、小平にある「小平市ふれあい下水道館」の2つ。全国的にも珍しいレア施設が、実は東京都に2つもあるんです。生まれてこのかた30年、東京都で暮らしてきた私ですが、この取材をするまで知りませんでした......!
「2つあったとしても、同じような内容でしょ?」と思った方、実は全然違います。それぞれ特徴や個性があり、別の体験ができる施設なので、あなたの知りたいことに合わせて選んでみてください。
2. 「東京都虹の下水道館」に行ってみた!

東京都虹の下水道館は、江東区有明にある東京都下水道局の広報施設です。見学は無料で、予約は不要。アクセスは最寄駅の東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)「お台場海浜公園」駅から徒歩8分です。
お台場海浜公園駅から橋を渡ると、臨海副都心エリアらしい近未来的なビルが出現! このビルの5階が東京都虹の下水道館です。
東京都虹の下水道館は1997年にオープンし、2013年に今の体験型施設のかたちに全面リニューアルしたそう。現在では、豊富なお仕事体験ができることや、隣接する有明水再生センター(下水処理施設)の見学ができることが人気の施設となっています。
なぜ「虹の」なの?

「下水道」と「虹」はイメージが離れている気がしますが、なぜ「虹の」というネーミングなのでしょうか?
東京都虹の下水道館があるのは、「レインボーブリッジ」などで有名なお台場の臨海副都心エリア。このエリアの愛称であった「レインボータウン」にある下水道のPR施設としてわかりやすいことなどを理由に、一般公募の中から「虹の下水道館」が選ばれました。臨海副都心エリアの愛称がレインボータウンということさえ知りませんでした......! 勉強になります。
実物大の下水道管がお出迎え!

東京都虹の下水道館に来たなら、まず写真を撮りたいのがココ! エントランスの「どかんビジョン」でしょう。エレベーターで施設のある5階に降りると、いきなり実物大の大きな下水道管が出迎えてくれます。
どかんビジョンに近づいて立っていると、映像の中で下水やゴミが流れてきます。滝行みたいでちょっとだけシュールだなぁ......(笑)。
ここ、後述する小平市ふれあい下水道館の職員の方も「写真を撮った! 」と嬉しそうにお話しされていました。訪問記念にぜひ。
まずはここから! 「アースくんの家」

東京都虹の下水道館に入ってまず目に留まったのが、床に張り巡らされているシースルーの排水管や側溝の模型。それを追っていくと、「アースくんの家」というコーナーにたどり着きます。
初めて来たなら、まずこのアースくんの家から見学するのがおすすめ。家の水がどうやって流れて下水道管に入るのか、実際にお風呂やトイレの水を流して確かめることができるんです!
ではさっそく、アースくんの家にお邪魔して、水を流してみましょう。

ジョロジョロジョロ......。
見学施設で蛇口をひねってリアルなお風呂の水を流している......。なんだか非日常すぎて背徳感がありました。
この水を追いかけてみましょう。

お! 流れていきました!
「トイレやお風呂の水が排水管を通って下水として流れていく」なんて、あたりまえの知識だと思うかもしれませんが、実際にやってみると納得感と親近感がまったく異なります。下水は日常生活に密接しているということを、子どもはもちろん、大人も体感できるコーナーでした。
ちなみに「アースくん」は東京都下水道局の公式キャラクターです。東京都に住んでいる方は、どこかで見かけたことがあるかもしれませんね。
目指せマイスター! 豊富なお仕事体験

東京都虹の下水道館は、小中学生向けの「お仕事体験」が充実している点が大きな特徴。通常は土日祝日に、夏休み・冬休み・春休み期間中は平日でも毎日実施している人気のプログラムです。
体験できるのは、実際に下水道職員がやっている以下5つのお仕事。
- 下水道管をピカピカにしよう!
- 下水道管を"たんけん"しよう!
- パイプをつないでポンプを動かそう!
- まちを大雨から守ろう!
- び生物を観察しよう!
これに有明水再生センターの見学も加えて、合計6つの体験をすると、「下水道マイスター」に認定してもらえるそうです。コンプリートするのに最低2日間はかかる6つの体験ですが、何度も体験して20回以上マイスターになっている子もいるんだとか。強者すぎる......!
通常は小中学生のみのお仕事体験ですが、今回は特別に「2. 下水道管を"たんけん"しよう!」を体験させていただきました。

実際の下水道管と同じ、マンホールサイズの入口から、はしごを降りて下水道管内に入ります。ここから先はカメラを入れることができませんでしたので、行ってからのお楽しみ。奥には下水道管内を再現した広い空間があり、手持ちのライトで照らしながら傷んでいる箇所を探したり、修復する方法を目で見て学んだりすることができました。
その他の体験も実物大のものを見たり、体を動かしたりしながら学べる体験ばかり。お子さんたちはめったにない経験にテンションが上がること間違いなしでしょう。
下水道館内にある映画館?

東京都虹の下水道館には「レインボーシネマ」というシアターもあります。現在上映されているのは7本の映画。アニメから実写まで、最短6分〜最長33分の下水道に関するオリジナル短編映画を無料で楽しむことができます。
私は「レインボーハート」という下水道の仕事をテーマにした映画を観させていただきました。そのほかにもファンタジーからホラーまで、いち広報施設の映像作品とは思えない、幅広いジャンルの映画が揃います。体を動かす体験もいいけれど、ゆっくり座っていたい日には、映画鑑賞もおすすめです。
マンホールカードをもらおう!

下水道関連施設や公共施設などでもらえる、「マンホールカード」というコレクションカードをご存知ですか? マンホールカードは、下水道への興味関心を高めてもらうことを目的として全国の自治体で発行され、現在は1,000種類以上にも及んでいます。マンホールカードを集めるために全国を飛び回るコレクターもいるんだとか! 何かを集める旅が好きな方、テーマを決めてあちこち旅行したい方、次のテーマは「マンホールカード」でいかがでしょう。かなり集め甲斐がありそうです......!
東京都虹の下水道館でもらえるマンホールカードは、東京23区のデザイン。「このフタ、見たことがある! 」という方も多いでしょう。マンホールカードはインフォメーションでスタッフに声をかけなければもらえないので、コレクションしたい方は忘れずに!
あわせて行きたい2つの施設

東京都虹の下水道館に来たなら、あわせて行きたい施設が2つあります。
1つは隣接する有明水再生センターのガイドツアー。今回見学は叶いませんでしたが、土日や夏休み期間中などに開催されている大人気のツアーです。当日受付のみの先着順となりますが、混雑する日は10分で定員に達してしまうんだとか。

2kmの見学コースのなかで、だんだんと下水が綺麗になっていく工程を体感することができます。リアルな水の色やにおいを体感しながら、汚れた水が綺麗な処理水や再生水に変わっていく様子を見ていきましょう。
※有明水再生センターは工事中(2024年3月現在)のため、見学箇所に制限があります。また、見学中止となる場合があります。最新情報は東京都虹の下水道館ホームページをご覧ください。
もうひとつ、あわせて立ち寄りたいのが「東京都水の科学館」。東京都虹の下水道館から徒歩8分のこの施設は、下水の逆、「上水」について知ることのできる施設です。
下水と上水の施設がこんなに近くに隣接する場所は珍しいそうです。だからこそ、あわせて見学する人も多いんだとか。せっかく行くなら東京都の下水&上水について、セットでまるっと学んでみませんか?
東京都虹の下水道館の基本情報
- 住所:東京都江東区有明二丁目3番5号 有明水再生センター5階
- 開館時間:午前9時30分~午後4時30分(入館は4時まで)
- 入館料:無料
- 休館日:月曜日、年末年始
※月曜日が休日の場合は開館し、その翌日が休館となります。
※夏休み期間については、無休となります。
※下水道の日(9月10日)、都民の日(10月1日)は開館します。 - アクセス:東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)「お台場海浜公園」駅下車 徒歩8分
- 駐車場:一般利用者駐車場(107台・共用)あり
- 電話番号:03-5564-2458