民間放送事業者に対するNHKの協力義務の強化

 前述のとおりネット配信はテレビ業界も注力している領域であり、NHKは民業圧迫との批判を回避するために巧妙に手を打っている様子もうかがえる。今回の改正放送法には「民間放送事業者が行う放送の難視聴解消措置に対するNHKの協力義務の強化」も盛り込まれている。

<NHKによる放送全体の発展に貢献するプラットフォームとしての役割を果たす観点から、NHKに対し、民間放送事業者から中継局の共同利用等の難視聴解消措置についてNHKとの協力に関する協議の求めがあった場合に当該協議に応じることを義務付ける>(総務省「放送法の一部を改正する法律案の概要」より)

 NHKは昨年10月に発表した「NHK経営計画24~26年度」(案)で、NHKと民放の二元体制維持のための予算として3年間で600億円を計上。昨年6月には、苦境に陥るローカル局に対して総務省とNHK・民放が一体となって救済に動く「放送法及び電波法の一部を改正する法律」が公布されており、同月の総務省発表資料「現状と課題」には、中継局の共同利用について次のように書いてある。

「将来的な経営形態の合理化も見据え、現在の地上テレビ局が、中継局の保有・運用・維持管理を担うハード事業者(共同利用会社)の利用を可能とする。(NHKと民放の連携も想定)NHKが、自らの設備だけでなく、子会社であるハード会社の設備を用いることを可能とする」

 そして、放送番組の同一化についてはこう書いてある。

「放送対象地域自体は変更せず、希望する地上テレビ局が、総務大臣の認定を受けることにより、複数の放送対象地域において放送番組を同一化できる制度を創設する。(例えば、同系列の隣県で同一化)」

 民放キー局関係者はいう。

「要は、国民から徴収したNHK受信料を、経営悪化の民放ローカル局の救済に使うというもので、まったくもって、おかしな話。こうしたNHKと民放局の協力関係もあるため、民放各局もNHKがネットでオリジナルコンテンツを配信することには強く反対する一方、受信料の問題については沈黙を守っている」(3月2日付当サイト記事より)