アンモニアを肥料ではなくエネルギーとして活用

――アンモニアと聞いて思い浮かぶのは「尿」なんですけど、有用な物質だったんですね…
Maroonian:アンモニアは臭いし、毒性もあります。これまでは、アンモニアは基本的には水素ではなく窒素から肥料として使うために作られてきました。

地球上にこれだけ人間が存在できるのは、アンモニアのおかげなんですよ。アンモニアがなかったら、こんなに早く食料を作れません。「おかげ」という言い方でいいのか分かりませんが(笑)、アンモニアが大量にあるおかげで、人類は食べられるんです。今後もアンモニアは肥料として使われるでしょうが、当社はエネルギーとしても使っています。

――アンモニアの分解技術自体は以前からあるものですよね?
Maroonian:プロセスとして新しくはないです。当社が新しくやっているのは、触媒を使ってメンブレンを組み立てたシステムですね。その最適化を見つけて装置を開発したのが新技術です。

基本的にはでかいプラントや大規模な建屋などでやるようなことを、冷蔵庫サイズの誰でもエネルギーを買える・使えるようなシステムを展開しています。誰でもといっても(一般消費者ではなく)基本は企業向けで、重工業の分野などで使われるものです。

アイデアはトヨタの燃料電池車「MIRAI」から

――起業はいつ頃で、きっかけは何でしたか?
Maroonian:アイデアを思い付いたのはトヨタの社員時代ですが、このスタートアップを始めたのは2022年末です。2年で頑張ってチームを作って開発しました。日本はやっぱりアンモニアや水素への興味が高いし、私はもともとトヨタ勤務で日本にはよく来るし、妻も日本人。日本とのつながりはいっぱいあるので、何かできるんじゃないかなって思ってます。日本でのクライアントはまだいませんが、私は日本語もできますし、いつでも日本に来ますので(笑)。

日本へは、大学卒業後にスイスの1年間のプログラムで来ました。3ヵ月日本語を学習して9カ月は研修するというものです。奈良県にあるトヨタグループの企業ジェイテクトに勤務して、その後、ドイツのトヨタガズーレーシングヨーロッパで勤務しました。

――アイデアはトヨタ時代からあったんですね。
Maroonian:トヨタで勤務していた時に、燃料電池の車「MIRAI」を見ました。これはすごい、なんでもできると思ったんですが、やっぱり水素の運搬・貯蔵に課題が残っていました。それで、どうしてトヨタではこの問題に取り組まないんですかと聞いたら、「うちは車しかやらない」と。それは当然ですよね。その時にじゃあ、何ができるのかいろいろな人や大学から話を聞いて。こういう技術ってないんですよねということが分かって、やっぱり自分でやりたいと思い独立しました。

Neologyがうまくいったら将来的にはトヨタと提携する一緒に協力するとか。同じ水素の未来を担えるかと思います。これは私の「夢」ですね(笑)。