かねてより噂されていたメルセデス・ベンツGクラスのマイナーチェンジがついに実施された。一見したところ外観の変化は最小限のようだが、中身はどんな進化を遂げたのか?
軍用車両からセレブリティ御用達の高級SUVに
今やセレブリティ御用達SUVの筆頭として世界中で高い人気を誇るGクラス。メルセデス・ベンツがオーストリアのシュタイア・プフとの共同開発により1979年にリリースした本格的クロスカントリーオフローダー「ゲレンデヴァーゲン」に出自を持ち、軍用車両としてNATOに制式採用されたという事実が、その類い希なるオフロード性能を物語っています。
2018年には大規模な改良を受けましたが、堅牢なラダーフレーム構造やリアリジッドアクスル、悪路走行に不可欠な3つのメカニカルデファレンシャルロックなど、本格オフローダーとして肝となるメカニズムは継承されました。同じく本格オフローダーのランドローバー ディフェンダーが新型ではラダーフレーム構造からモノコックボディに生まれ変わったのとは対照的です。

その一方で、フロントサスペンションがリジッド式から現代的なマルチリンク式に、ステアリング形式がリサーキュレーティングボール式から一般的な乗用車でおなじみのラック&ピニオン式電動パワーステアリングに変更され、オンロードでの運転のしやすさや快適性が大幅に向上しました。Sクラスに匹敵する上質なインテリアや、当時としては最新式のインフォテインメントシステム、運転支援システムなども備わり、高級SUVとして揺るぎないポジションを築いたのはご存じの通りです。
エクステリアデザイン
あれから6年。マイナーチェンジを受けた新型Gクラスはいかなる進化を遂げたのでしょうか? まずエクステリアに目を向けると、角張った武骨なデザインは一見、従来モデルのままのようですが、つぶさに観察すると所々が変更されていることに気がつきます。例えばラジエターグリルですが、従来型は3本の水平ルーバーが備わっていたのに対し、新型は4本に。また、バンパー両サイドのエアインテークも大型化され、よりアグレッシブな印象を獲得しました。改めて新旧モデルを見比べると、現行モデルに型落ち感が漂うのは否めません。

マイナーチェンジ前(G550)

注目すべきは、GクラスのEVモデルである「EQG」で開発されたデザインディテールが採用されたこと。Aピラーに施された整流効果のある樹脂製パーツや、ルーフ先端のスポイラーリップです。これらにより、Gクラスの弱点である空力特性と風切り音の低下による快適性の向上が図られています。アイコニックなデザインはそのままに、小さな改善を積み重ねることで弱点を克服していこうという姿勢に、メルセデスがいかにGクラスというクルマを大切に育んでいるかが分かるでしょう。

マイナーチェンジ前(G550)

おなじみのドアハンドルのデザインにも大きな変更はありません。しかし、新たにキーレスゴー機能が与えられたのは朗報です。Gクラスのドアロック解除にはリモコンキーのボタンを操作する必要がありますが、これには多くのオーナーが煩わしさを感じていたことでしょう。一方、新型ではドアハンドルのボタンに触れるだけでロックが解除できるようになりました。
ちなみに、ドアを閉じたときの特徴的な金属音はキープされているそうです。

このようにユーザーにとって進化してほしい部分は着実に進化し、残してほしい部分は大切に継承されている。それこそが新型Gクラスの真骨頂といえるでしょう。