ないがしろにされる公益通報制度

 公益通報とは、事業者による違法行為を労働者が組織内の通報窓口や権限を有する行政機関などに通報する行為。公益通報者保護法によって、事業者が公益通報をしたことを理由として労働者などを解雇したり、降格や減給など不利益な取り扱いをすることは禁止されている。また、事業者の内部通報担当者には守秘義務が課されており、通報に関する秘密を保持しなければならない。

 大企業においても、この公益通報制度がないがしろにされ通報者が不利益を被るケースは枚挙に暇がない。

 07年、オリンパスが取引先から機密情報を知る社員を引き抜こうとしているとして、男性社員が社内の内部通報窓口に通報。これを受け会社側は男性を複数回にわたり配置転換し、男性は配置転換の無効と損害賠償を求め同社を提訴した(男性が勝訴)。

 14年、みずほ銀行の男性行員は上司の問題行為を支店長に報告したところ、別の部署に異動させられ再三にわたり人事部から退職勧奨を受け、16年4月から20年10月まで4年半もの間、自宅待機を命令された。男性は社内の内部通報制度を利用して複数回にわたりパワハラ防止法違反が生じている旨を通報したが、銀行側は規定に定められたコンプライアンス担当部門による対応を行わず、男性に退職勧奨を行っていた当事者である人事部が対応を行っていた。

 18年、日本郵便の複数の郵便局長が九州支社副主幹統括局長の息子である郵便局長の内規違反について、同社の内部通報窓口に通報。すると統括局長は通報者に役職の辞任を求めるなどし、通報者の一部は地元の郵便局長会を除名されたりした。