絶対音感を生み出す薬
天才といえば、絶対音感も音楽においては天才の才能だろう。音楽教室などは絶対音感は幼少期でなければ身につかないと喧伝するし、大人になってからは絶対音感は身に着かないというのが現在の常識である。
2013年12月3日、フランスの精神知覚研究所のジュディ・ガーバイン、ハーバート大学脳科学センターのヘンシュ高尾らは、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の一種、バルプロ酸ナトリウムを投与した成人が、音階を識別する能力が向上したと発表した。絶対音感が習得できる薬が発見されたということなのだ。
バルプロ酸ナトリウムはてんかん発作や躁鬱病の治療に使われる薬で、脳神経の興奮を抑制するガンマアミノ酪酸= GABA の脳内濃度を高め、発作を抑える。このGABAに学習能力を高める効果があるらしい。
2007年10月、都内の私立小学校に通う6年生の小学生61名(平均年齢11.6±0.5歳、男児25名、女児36名)を対象にGABAを含有したチョコレート(GABAはアミノ酸の一種で、経口摂取が可能である)を与えたところ、計算能力を調べるクレペリン検査のスコアが有意に上がったという。
実験を行ったギャバ・ストレス研究センターによると、ギャバによってストレスが低下したことで、学習能力が高まったらしい。つまりバルプロ酸ナトリウムには、脳内のギャバを増やすことで脳のストレスを軽減させ、絶対音感だけではなく、あらゆる学習能力を高める可能性があるのだ。ちなみにギャバは添加物以外でも、玄米やキムチ、ほうれん草、根菜類などに多く含まれ、サプリメントも販売されている。