TOCANAにも寄稿いただいていたサイエンスライター:久野友萬氏の新著『ヤバめの科学チートマニュアル』が2024年1月31日、新紀元社より発売された。まさに“ヤバい”内容が目白押しの一冊から、特別にTOCANA編集部イチオシのテーマを抜粋してお届けする。第3回目である今回のテーマは「天才を作る技術」だ。(TOCANA編集部)

『絶対音感を生み出す薬』『誰の脳にもある天才の能力』天才を作る技術とは…まだまだ謎に満ちた脳の世界
(画像=『TOCANA』より 引用)

脳は半分しか使われていない?

 映画『レインマン』で有名になったサヴァン症候群は、右脳が異常発達した人間だ。彼らは天才的な計算能力や記憶力を発揮する。その代わりに社会性や言語能力は貧弱だ。

 シドニー・オーストラリア大学のアラン・スナイダー教授は、TMS(経頭蓋磁気刺激)を左側頭部に当て、磁気により神経の興奮を鎮める=機能を低下させることに成功した。

 左脳の機能をダウンさせ、一時的に右脳だけで動く右脳人間を作ったわけだ。その結果、TMSを受けている間、被験者は非常に写実的な絵を描くことができた。サヴァン症候群の特徴に、一度聞いた曲をその場で演奏したり、まるで写真のように写実的な絵を描く芸術の才能がある。左脳の機能が低下することで、そうした芸術的な才能が右脳から引き出されたらしい。

 私たちの脳は、本来の能力を抑圧しているのだ。

 サヴァン症候群に見られる、電話帳を丸ごと記憶するような桁はずれの記憶力、3桁の数字の三乗を瞬時に暗算する計算力といった、天才の能力は誰の脳の中にもあるらしい。

 人間は脳の10%あるいは30%しか使っていないとよく言われる。これはあくまで俗説で、脳の総重量の9割を占めるグリア細胞が、脳神経を支える足場のようなもので脳の情報処理に無関係だと考えられていたためだ。現在はグリア細胞が神経の伝達効率を上げたり、血流の制御を行っていることがわかっている。

 しかしそうではなく、スナイダー教授の実験からわかるのは、実際に脳が自ら機能を抑制しているということだ。

『絶対音感を生み出す薬』『誰の脳にもある天才の能力』天才を作る技術とは…まだまだ謎に満ちた脳の世界
(画像=Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)