朝の時合いは空振り
さて午前5時20分に出船し、ものの10分ほどでイカダに到着。山根さんはそそくさとタックルをセットし、渡ってから5分もしないうちに岸に向けてエギをフルキャスト。風は全くなく、絶好のエギング日和だ。
戸松さんは2号4.5mの磯ザオに1.5号のミチイトを通し、先にチヌバリ1号を結び、アジの尻尾に近いゼイゴの部分に刺す。この方がアジが自由に泳いでくれるのだ。
そして戸松さんはもう1本。コンパクトロッドにセットしたのは、ウキ釣り仕掛けだ。これは最初からアジに掛けバリをセットしたもの。使用したのはハピソンの夜釣り用アオリイカ仕掛けだ。
これは後から掛けバリを送るヤエンと違い、アジに掛けバリが付いているので、イカがアジを抱いた瞬間にハリ掛かりする。だが負荷なく自由に泳ぐヤエン仕掛けに比べ、余分なものが付いているのでアジの弱りが早い上に、イカが警戒してアタリの数が減るというデメリットもある。
開始して2時間、エギングにもアジにも全く反応はない。朝の時合いは完全に空振りに終わってしまった。実は宝成渡船の羽根船長からは、ここ最近アオリイカの釣果がかなり落ち込んでいると聞いていた。第一陣として入ってきた群れが産卵行動に入ったか、潮が変わったか。
1匹目はウキ釣り仕掛けに
それでも名手2人がいるのだからと、気楽に構えていたが、あまりの反応のなさに少々焦りを覚え始めたころ、ウキ釣り仕掛けをセットした戸松さんのコンパクトロッドがズズッと引きずられ、海に落ちそうになった。
慌ててロッドを手に取る戸松さん。見るとミチイトがぐんぐん沖へ引っ張られている。見ていた山根さんが「ほんまにイカのアタリ?」と言うほど激しいアタリだ。アワセを入れると、特有のジェット噴射。間違いなくアオリイカの引きだ。
ゆっくり寄せてネットに収めたアオリイカは、700gほどのまずまずサイズ。「絶対離すもんか!」とアジをしっかり抱きかかえていた。
ヤエンにも待望のアタリ
このヒットから30分ほどしたころ、今度はヤエン仕掛けの磯ザオにセットしたリールのドラグがけたたましく鳴り響いた。そう、ヤエン釣法ではドラグは極限まで緩めておくのが基本。イカがアジを抱いて泳ぎだしたとき、違和感を一切与えないためだ。
だがここで戸松さんが「まずいな……」とぽつり。ミチイトの方向がイカダを固定しているロープの方向に向かっているのだ。ここでようやくイトの出が止まり、手でスプールを押さえながら寄せに入る戸松さん。ある程度寄せたところでいよいよヤエン投入にかかる。