苦境のC大阪戦でも浦和を救う

C大阪の布陣に戸惑い、自分たちの守備隊形を間延びさせられたなかでも、栗島は広範囲をカバー。持ち前の豊富な運動量と屈強な対人守備で浦和を救った。

栗島の活躍によりC大阪の攻撃を凌いだ浦和は、前半35分に先制点をゲット。MF塩越のコーナーキックにFW島田芽依がヘディングで合わせると、このシュートがゴールマウスに吸い込まれた。

試合終盤には、MF遠藤優(右サイドバック)が敵陣ペナルティエリアでのドリブルからPKを獲得。FW清家貴子(右サイドハーフ)がキッカーを務め、後半42分にこのチャンスを物にした。この2点のリードを守り抜いた浦和が、最終スコア2-0で勝利している。

この試合では栗島自ら前線へ飛び出し、自軍のハイプレスのスイッチを入れる場面も。C大阪が自陣後方でボールを保持した後半22分がこの典型例で、ここでは栗島が相手MF脇阪麗奈とDF筒井梨香の2人にプレスをかけ、ミスを誘発している。この同選手の2度追いにより、浦和はコーナーキックを獲得した。

「後半の2度追いした場面は、相手の動かし(パス回し)に私たちが受け身になっていたので、ここで(守備の)スイッチを入れようと思って意図的にやりました」と、栗島は筆者の取材のなかで述懐している。自軍に勢いをもたらすために何をすべきか。これを心得たうえでの秀逸なプレーだった。


栗島朱里 写真提供:WEリーグ

「今タイトルを獲れば自分にとって意味がある」

3月27日のアルビレックス新潟レディース戦(WEリーグ第20節)終了後、「今はすごく楽しくサッカーをできている」と語った栗島。同選手は2014年と2020年、及び2022/23シーズンに国内リーグ優勝を経験しているが、膝の再受傷の恐怖から完全復活したうえでのチームタイトル獲得となれば、本人にとって2023/24シーズンは掛け替えのないものとなるだろう。このバックグラウンドを踏まえたうえで、C大阪戦後に筆者は同選手に意気込みを聞くことにした。

ー新潟戦終了後、「今はすごく楽しくサッカーをできている」と仰っていましたね。今までにもリーグタイトルを獲っていらっしゃいますが、今シーズンタイトルを獲れたら栗島選手にとって、これまでとは違った価値のあるものになる気がします。いかがでしょうか。

「1回目のリーグタイトル(2014年)では、自分が怪我をしていて試合に絡めていません(自身1度目の前十字靭帯断裂)。2020年のリーグ優勝も、自分のなかでチームに貢献できた感じが全然しないんです。今ここでタイトルを獲れたら、自分にとって本当に意味あるものになると思います。先を見据えすぎずに、1試合ずつやっていけば(ベストを尽くせば)結果がついてくると思うので、地に足をつけてやっていきたいです」

ジュニアユース時代から浦和一筋。背番号6のバンディエラ(※)が幾多の試練を乗り越え、今大きなものを手にしようとしている。

(※)イタリア語で「旗手、旗頭」の意。サッカー界ではひとつのクラブに長く所属している選手を指す。