栗島がもたらした好影響
栗島が先発しないことが多かった2023/24シーズンのWEリーグ序盤7試合と、完全復活によりスターティングメンバーに定着した第8節神戸戦以降で、浦和の戦績に明白な違いがある。同クラブはリーグ序盤7試合でクリーンシート(無失点試合)を1度しか達成できなかったのに対し、第8節以降は9回成し遂げている。
総失点数も序盤7試合の「8」に対し、第8節から18節にかけては「5」と減少。栗島が自身の持ち味である球際での強さを取り戻し、自軍の守備を引き締めたことが浦和にとって大きなプラス材料となり、第9節からWEリーグ新記録となる11連勝を達成した(浦和は第20節を3月27日に消化)。
「3バックを予想していなかった」
浦和駒場スタジアムにて行われた5月3日の第18節C大阪戦は、直近のリーグ戦で浦和が最も苦しんだ試合と言えるだろう。C大阪はこの試合で従来の4バックではなく、3バックで浦和に対抗。攻撃時[3-1-4-2]、守備時(自陣撤退時)は[5-3-2]という布陣だった。
前半8分には持ち前のハイプレス(最前線を起点とする守備)をC大阪に掻い潜られ、アウェイチームFW田中智子に最終ラインの背後を突かれてしまう。田中のシュートがクロスバーに当たり事なきを得たものの、浦和が先制されてもおかしくない場面だった。
C大阪による想定外の布陣に戸惑い、チーム全体で自信を持ってハイプレスを仕掛けられなかったことが、この大ピンチに繋がったのではないか。筆者はこのように推察し、この試合終了後の囲み取材で栗島に質問してみた。
ー前半のピンチに陥った場面(同8分)についてお伺いします。基本布陣[4-2-3-1]の浦和サイドハーフ(MF伊藤美紀)が前に出て、C大阪のセンターバックにプレスをかけました。こうなると栗島選手と柴田選手の2ボランチが広いエリアを守らなければなりません。あと、サイドバックの寄せ(守備時の飛び出し)も間に合わず、これによってボールを奪えずに最終ラインの背後へパスを通されてしまった気がします。栗島選手はどのように感じていらっしゃいますか。
「自分たちの布陣にコンパクトさが無かったですね。相手の布陣に対して、自分たちの守備の形(やり方)がうまく嵌まらなかったのは(ピンチを迎えた原因として)あります。これは試合中に修正しないといけませんし、あのようなチャンスが相手に転がってしまったのは反省点です」
ー3バックのチームと戦うのは久しぶりでしたよね。それもピンチを迎えた原因のひとつでしょうか。
「(戦前に)3バックを予想していなかったです。試合中に気づいて、いち早く修正しないといけませんでしたが、それがうまくできませんでしたね。自分たちの距離感が開いてきたときに、サイドに出させよう(中央を封鎖し、相手のパス回しをサイドへ追いやろう)と声をかけていたのですが、途中で(自分たちの守備隊形に)コンパクトさが無くなってしまいました」
「あと、自分たちの攻撃のときにもう少し(味方同士)の距離感を縮めていれば、ボールを奪われてもその瞬間にプレスをかけやすいです。これも修正ポイントのひとつかなと思います。私たちのフォーメーションや立ち位置でどうにかなる部分もありますし、それも重要だとは思いますけど、(それ以前に)走るとか(球際で)戦うとか、そういう基本的なところで相手を上回らないと試合に勝てません。まずは一人ひとりがもっと走り戦う。次の試合からこれを表現しながら(守備を)修正していきたいです」