スぺースコロニーは実現するのか
オニールのスペースコロニーは多くの賛同者を集め、大いに盛り上がり、宇宙にユートピアを作るというアイデアから人類は生命を改変できる、地球を改変できる、宇宙を改変できると作家や科学者たちのアイデアは沸騰した。この時期のSFは異常に面白いが、それは社会的な熱気があったためだ。
生命改変技術としてのサイバネティクスや生命情報のコンピュータへのアップロード、クライオニクスなる人体冷凍技術、ナノテクノロジー、人間が人間を越えるトランスヒューマニズム、科学技術によって不老不死の実現した社会の社会通念を考えるエクストロピアニズム、恒星を丸ごと金属の球体で覆い、エネルギーを完全に利用するダイソン球といった未来技術のアイデアは、この時期に一気に噴き出した。
1970年代のアメリカ西海岸で起きた、この未来技術ブームがなければ、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』も漫画『攻殻機動隊』もなかっただろう。
スペースコロニーを技術的に可能か、金銭的に可能かという点から論じる以前に、人間は閉鎖環境で生きて行けるのか? という問題がある。スペースコロニーは絶対真空に浮かぶ筒であり、その世界は太陽光以外、完全に外界と断絶する。熱の出入り以外は外と何も出入りがない。それはある意味では小さな地球なのだ。地球もまた熱以外に宇宙との出入りはほぼない(隕石や人工衛星、太陽フレアを数に入れなければ)。
スペースコロニーのような閉鎖環境を作ることは非常に難しい。宇宙ステーションなり計画されている月面基地なりは閉じてはいない。地球からの物資を受け入れ、地上からのサポートがある。これを完全に閉鎖系として独立させると、想像以上のトラブルが発生する。