これからどうするか

AIと著作権法の問題についての現在までの検討状況を整理すると次のようになる。

AIの開発と著作権法 ⇒ 2018年改正 AIの開発と著作権法 ⇒ 未対応 AI生成物と著作権法 ⇒ 未対応

ウィニーのように使った人だけでなく開発者まで罰してはならない。例えば刃物を使って人を殺すのは問題だが、刃物には責任はないからである。生成系AIでは刃物が勝手に自動運転し始める危険性がある。

上記2. については、AIを利用したら著作権侵害が成立するのかが課題で、複製と翻案が問題になるが、類似性がなければ著作権侵害にはならないため、類似性がないことを前提にすると、依拠性(他人の著作物の創作的表現を自己の作品の中に用いること)が最大のポイントになる。

AIの場合、1分以内に同じ質問をしても異なる答えが返ってくるので、AIが何かに依拠しているとは言いにくい。AIに含まれるのはパラメーターなので、パラメーターの組み合わせで出てきたものに依拠性はないと考えられる。

ただ、画像を入力して画像を生成するi2i(image to image)では、他人の画像を入力して、元画像と類似した生成物が出てきた場合は著作権侵害が成立する可能性は高い。

テキストを入力して画像を生成するt2i(text to image)では、依拠性があるかどうかの判断は理論的には難しいので、場合によっては政策判断が必要かもしれない。すべて司法判断にお任せというのはAI戦略としては問題があるので、どこかで結論を出す必要がある。

上記3. のAI生成物については、30条の4を追加した2018年改正前の2016年時点でも議論はされていた。

AIは創作本能を持たないと現在のところ、言われており、人間からの「○○を作って」という働きかけは必要と考えられることから、「AIによる創作」には権利は発生しない。

人に①創作意図及び②創作的寄与があり、「AIを道具として利用した創作」については、権利が発生するという考え方もあるが、まだ確定したわけではない。

人間よりはるかに高い生産性で創作物を生成することが可能なことから、人工知能を利用できる者(開発者、所有者等)による情報独占、その結果、個人であるクリエーターの萎縮/締め出しが懸念されるため、AI創作物の知財制度上の取り扱いについて、改めて検討してはどうか」としているがその後、検討はされていない。