開発のきっかけは点滴管理に対する医師の要望から

――Monidrop開発の理由は、看護師の人手不足だったのでしょうか。
ケラネン:それもありますが、最初に医師の側から「もう少し点滴管理をしっかりしてほしい」という要望があったんです。さきほど言ったとおり、500ミリの製剤を2時間あるいは5時間かけて投入するという指示を出しても、結局バラつきが出てしまいます。指示どおり落ちているかというと、そうではない。そうすると、12時間で投入するはずが終わっていなかった、といった事態がやっぱり出てしまう。

Image Credits:Monidor

ケラネン:もう1つの理由がおっしゃるとおり、看護師さんがどうしても忙しいこと。点滴の管理ってものすごく時間がかかるんですよ。点滴は取り付けてから最初の10分は行ったり来たりします。クレンメで調節してもどうしても速度が変わってしまうので、看護師の皆さんは巡回で何度も回ってるんですよね。チューブがビニールですから、患者さんが動いたりして曲がったり止まったりするんです。最初は早い速度で落ちていてたのに、だんだん遅くなってきたりとか。

それで、たとえば30人の患者を担当していると病室を回るにしてもあちこち移動するので見るだけでも1時間かかってしまいます。その時間が、Monidropのデータを見ることによってカットできるというのがありますね。

フィンランドの病院って、縦に高いんじゃなくて横に広いんですよ。土地があるので(笑)。そうすると点滴の確認移動ですごく時間がかかってしまう。他にも重要な処置や業務がいっぱいあるのに、「点滴の管理だけで1日終わっちゃう」といった問題があって、なるべく効率的に進めたいということで開発されました。

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ケラネン:当初は輸液モニター単体でしたが、後からリモートで確認できるモニタリングシステムを追加しました。その後は、〇〇大学病院の〇〇病棟で導入したら、他の病棟も「何使ってるの」と興味を持って…という感じで、ほとんど口コミで広がっていきました。Monidor社の設立自体は2015年ですが、製品が完成したのは2020年なので比較的最近の話ですね。

日本では在宅・訪問介護の分野に注力予定

――それがすでに多言語展開されているんですね。アプリの表示も日本語になっています。
ケラネン:元はもちろんフィンランド語なので、日本では泉工医科工業さんにすべてローカライズしていただきました。いろんな言語に展開していて、今日もルーマニアへ納品に行っているところです。日本では2023年4月から展開していますが、私たちもどこの病棟に提案したらよいのか、フォーカスの仕方になかなか苦労していました。それで最近分かってきたのが、在宅・訪問介護での需要です。

訪問介護でもやっぱり皆さん同じ悩みを抱えていて、点滴を取り付けてから3時間後に取りに行ったら終わってなかった、後でまた取りに行かないといけない、途中で回収しないといけない…そういう問題があるんです。Monidropを使うことによって、そういった問題が解決されるので、これからは在宅医療の方にフォーカスを置くことになるかと思います。

――少し再配達問題に似ていますね。日本は超高齢化社会だから需要もありそうです。
ケラネン:だと思います。点滴を確認に行って「あ、終わってなかった…」「この後どうしよう」とガッカリするそうです。Monidropがあれば点滴が終わっているところを回ればよいので、1日のプランを自分で立てられます。ですが、日本での展開はまだこれから。恐らく、こういう製品があるということ、需要自体が知られていないんでしょうね。「そういう解決法があったんだ」「こういう製品があったんだ」ということをご存じじゃないと思います。製品の知名度を上げて、皆さんに使っていただきたいですね。

――今後、Monidrop以外のデバイスを開発・販売する予定などはありますか。
ケラネン:まだどんなものか言えないのですが(笑)、似たような感じでモニタリング製品の予定があります。