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終始悩まされたアンダーパワーと、騒音/振動問題
成功した縮小版、ルシーダ/エミーナ
終始悩まされたアンダーパワーと、騒音/振動問題
小型軽量で高出力、トルク変動も少なく、ミニバンの床下に積んでも快適…なはずだったS2エンジンですが、4ストロークDOHCエンジンをベースに開発(1989年の東京モーターショーで、ソアラに載せて展示されたS2エンジンの試作機は7M-Gベース)したのがネック。
カムシャフトの振動が、トヨタ自身の基準をクリアできなかったばかりではなく、スーパーチャージャーで強制掃気する排気ガスの規制を突破する触媒の開発も難航し、結局はお蔵入りになりました。
一応、同じ1989年の東京モーターショーで発表された新型ミニバン「プレビア」、1990年に日本でも発売された初代「エスティマ」には、通常の4ストロークエンジンが搭載されており、S2エンジンがモノにならずとも市販前提ではあったようです。
しかし、搭載した2.4リッター直4DOHCエンジン「2TZ-FE」は、同じく床下にエンジンを搭載するフルキャブオーバー商用車にも対応するRZ系をベースに開発したもので、乗用車用としてはアンダーパワーなうえに、騒音/振動面でもほめられたものではありません。
後にスーパーチャージャーを組み込んだ「2TZ-FZE」搭載車を追加し、アンダーパワーはいくらか解消したものの、まるで商用車のように床下で唸るエンジンの騒音や振動はついに解決せず、S2エンジン搭載を前提としたエスティマの欠点であり続けました。
成功した縮小版、ルシーダ/エミーナ
さらに、全長4.7m超、全幅1,800mmという今なら大したことのないサイズも、1990年代前半当時の日本では「デカすぎる」と酷評の元であり、大型高級車として考えようにも、床下では車格に対して不相応にみすぼらしいエンジンが唸っています。
後にミニバンレースではオデッセイと激闘を繰り広げるなど、ミッドシップレイアウトによる走行性能自体は優れていたものの、本来のミニバンとしては評価がイマイチだった初代エスティマですが、転機となったのは1992年に発売された5ナンバーサイズの縮小版です。
エスティマを販売していた販売チャンネル向けに、同車の弟分として開発され、トヨタ店向けは「エスティマエミーナ」、カローラ店向けは「エスティマルシーダ」として発売され、姿形はエスティマそのもの、全長をちょっと縮めたほか、全幅はぐっと細く1,690mm。
当時のRVブーム(※)に乗って、商用車ベースのミニバンがそれこそ商用1BOXベースでも売れるようになったので、エスティマも5ナンバーサイズなら活路があると見込まれてのナローボディ化でしたが、これが大当たり!
(※誤解がありますが、RVとは現在のSUV以外に、ミニバンやステーションワゴン、トールワゴンなども含みます)
燃費が悪い2.4リッタースーパーチャージャーエンジンの代わりに搭載した、2.2リッターディーゼルターボもトルクフルで好評で、これが日本における初代「エスティマ」の代表モデルとなりました。
あの頃の日本で見かけた「エスティマ」の大半はルシーダ/エミーナで、たまにフルサイズの元祖エスティマを見かけると、迫力のあるワイドボディでアメ車のように感じたものです。