ホン・ミョンボ監督の采配に対応できず
2戦合計スコア1-3と劣勢に陥った蔚山のホン・ミョンボ監督は、前半34分にMFダリヤン・ボヤニッチを投入し、基本布陣を[4-4-2]から[4-1-2-3]へ変更。このフォーメーションチェンジに対応できず、ハイプレスを緩めてしまった横浜FMは蔚山の自陣後方からの配球を許し、前半35分にサイド攻撃を浴びる。この1分後に行われた蔚山MFイ・ドンギョンのコーナーキックをMFマテウス・サレスに物にされ、ホームチームは2戦合計スコアで1点差に詰め寄られた。
前半39分には敵陣でのボールロストからボヤニッチにボールを運ばれ、攻め上がっていたDF永戸勝也(左サイドバック)の背後へパスを通されてしまう。横浜FMのセンターバック上島が自陣ペナルティエリアでスライディングを仕掛け、蔚山FWオム・ウォンサンのドリブルを止めようとしたものの、ボールが無情にも上島の腕に当たる。上島による決定的な得点機会の阻止で蔚山にPKが与えられたうえ、同選手にはレッドカードが提示された。
ボヤニッチのPKは成功。横浜FMは2戦合計スコアを3-3の同点にされたうえ、3月13日のACL準々決勝第2戦(山東泰山戦)と同じく10人での戦いを余儀なくされた。
横浜FMが瀬戸際で発揮した柔軟性
10人という難局を乗り越えるべく、キューウェル監督は後半開始前にDFエドゥアルドとMF山根陸を投入。布陣を[4-3-2]に組み直したが、最前線から中盤に降りてくるFWチョ・ミンギュや、逆に中盤から最前線へ飛び出すMFイ・ドンギョンを捕まえきれない。豊富な運動量で広範囲をカバーでき、先述の山東泰山戦でも守備面で気を吐いた喜田拓也と渡辺皓太の両MFを欠いたことで、最終ラインと中盤の間にボールや人を通され続けた。
3セントラルMFの外側もボヤニッチに使われ始め、[4-3-2]の横浜FMの守備ブロックは崩壊寸前だったが、キューウェル監督がMF水沼宏太とDF加藤蓮を投入し、彼らに3セントラルMFの左右を担当させたことで守備の出足や強度を維持。後半終了間際に[4-4-1]、延長戦では5バックを敷くなど、ピッチ上の選手たちの助けとなる手は全て打てていた。キューウェル監督の当意即妙な布陣変更、それに応えた選手たちの柔軟性が物を言った一戦だった。
横浜FMらしいアタッキングフットボールを披露できた時間は短く、むしろ受難の時間帯が長かったが、見方を変えればハイプレスを基調とする攻撃的サッカーを完遂した前半の30分間で3ゴールを奪えたことが、今回の決勝進出に繋がったとも言える。まさにアタッキングフットボールの勝利。「この横浜に優るあらめや」と誇りたくなるようなビッグマッチだった。