目次
■【PART 5】物語に彩られた一杯を堪能する
COCKTAIL TRIVIA [カクテルの雑学]

■【PART 6】洋の東西で変わるバー文化
DIFFERENCES WITH JAPAN[日本と海外はどう違う?]

■【PART 5】物語に彩られた一杯を堪能する
COCKTAIL TRIVIA [カクテルの雑学]

●ミクソロジーが生んだ バー文化の新しい潮流

バーの文化だけでなく、カクテルにもさまざまな歴史がある。その誕生には健康を考えたものだったり、生産業者の都合によるものだったり由来は多種多様だ。

またよくクラシックカクテルという言葉を耳にするが、それは世界的に作り続けられるレシピと知名度を持つものを指す。ほとんどのレシピは18〜19世紀に生み出され、初期のものは数種類を混ぜる程度ものが多い。またカクテルを作るべくしてレシピを考える現代に対し、昔の方がその場しのぎのために偶然生まれたものも多い。

さらにバーの楽しみ方は、2000年代以降のミクソロジーの隆興で変貌した。

ミクソロジーとは、Mix(混ぜる)、Ology(〜論)を組み合わせた造語だ。酒をリキュールやフレーバーシロップで割って作るクラシックカクテルに対し、野菜やフルーツなど自然由来の材料と酒を組み合わせて作る、新しいスタイルのカクテルだ。

ミクソロジーは既成概念にとらわれない。例えば、ウォッカ&トマトジュースの定番カクテルであるブラディマリーに、バジルを加え、さらにブラックペッパーを利かせたり、ベーコンの薫香を移したウォッカ、ブルーチーズの香りがするマティーニを考案したりと、これまで自由闊達なカクテルを生み出してきた。

実験的要素が強いのもミクソロジーの特徴で、手の込んだレシピも厭わない。

□世界で一番飲まれている
「ネグローニ」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

今、世界で一番飲まれているといわれるクラシカルカクテル。イタリアのカミーロ・ネグローニ伯爵が愛飲したことからその名が付けられている。グラスにジン、カンパリ、スイートベルモットを入れてステアし、オレンジピールを添える。定番レシピから派生して、◯◯◯ネグローニと名の付くアレンジカクテルも多数存在する。

□薬代わりに飲用した
「ギムレット」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

18世紀、イギリス海軍の軍医であったギムレット卿が、配給されたジンを将校たちが飲みすぎることを心配し、同時に長い航海でのビタミンC不足を補うために、ライムジュースを入れて飲むことを提唱したのが起源とされる(諸説あり)。コーデュアルライムを使うと緑色に、フレッシュライムを使うと透明に仕上がる。

□3つの偶然が重なって生まれた
「モスコミュール」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

1941年にロサンゼルスのバーで誕生した。ウォッカ「スミノフ」、ジンジャービア、銅製マグカップ、それぞれの売れ行きに困っていた3人がバーで出会ったのがきっかけで誕生。当初はジンジャーエールではなくジンジャービアを使用、銅製マグカップは現在でも使用する店は多い。3つの偶然が重なって生まれたカクテルだ。

□“紙飛行機”の名を持つバーボンカクテル
「ペーパープレーン」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

2000年前後にシカゴで誕生。バーボン、アマーロ、アペロール、レモンジュースをシェイクして作る。レシピは古典的にも思えるが、ほのかな苦味と甘み、爽やかな味わいのモダン・カクテルとして人気を呼んだ。生姜とレモンを使ったカクテル「ペニシリン」を考案した有名バーテンダーのサム・ロス氏のレシピ。

□独特の味わいから名前が付いた
「ペニシリン」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

2005年に登場するや欧米で人気に火がつき、一気に21世紀のスタンダードカクテルとしての地位を確立した。材料はウイスキー、レモンジュース、はちみつ、ジンジャーシロップをシェイクしてオン・ザ・ロックとし、最後にラフロイグをフロートさせる。その刺激的な味わいが抗生物質のペニシリンのようだと、そのまま命名された。

□いつの時代も飲まれる
「オールドファッションド」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

ネグローニと並ぶ人気のクラシックカクテル。海外ではファーストカクテルとして注文されることも多い。こちらはロングタイプでオールドファッションドグラス(ロックグラス)で愉しむ。グラスに角砂糖を入れビターズを振りかけ、氷を加えてウイスキーを注ぎ、オレンジスライス、レモンスライス、マラスキーノチェリーなどを飾る。

【コラム】ノンアル需要が増加 モクテルも多種多様に

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=ノンアルコールジン・ネマ 問045-664-7305(写真提供/Cocktail Bar Nemanja)、『男の隠れ家デジタル』より引用)

ノンアルコールカクテルを総称してモクテルと呼ぶ。季節のフルーツ、ソーダやトニックのほか最近はノンアルジンや日本茶など意外な材料が使われることも。カクテルと同様の手法で作り、さまざまな素材の出合いから生まれる味わいを愉しむクリエイティブなドリンクだ。

■【PART 6】洋の東西で変わるバー文化
DIFFERENCES WITH JAPAN[日本と海外はどう違う?]

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=画像提供/ニューヨーク公共図書館蔵、『男の隠れ家デジタル』より引用)

●氷の性質

海外と日本のバーで決定的に違うのは氷だ。海外のバーでは製氷機が使われるのに対して、日本のバーは純氷を買う。純氷は不純物が少なく結晶の配列が規則正しく溶けにくい。氷が溶けて薄まらないので日本のカクテルは酒そのものの味が愉しめるのだ。一方、日本のバーで味の濃いカクテルが提供されない傾向があるのは、溶けにくい氷の性質によるともいわれる。

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

●速さ重視

日本のバーは一杯のカクテルを丁寧に、時間をかけて提供するが、海外のバーは客を待たせるのはタブーであり(待ち切れずに帰ってしまうので)、定番カクテルなどはプレバッジ(あらかじめブレンドして作り置く)で、素早く提供できるようにしておくのが基本だ。

●大勢で集う

ゆったり椅子に掛けて静かにグラスを傾けるのが日本のバー文化。一人で店を訪れる客も少なくない。海外のバーは立ち飲みスタイルで、グループで酒を酌み交わすことも多い。酒を速く提供することが求められるのには、そういったバー文化の違いも大きいといえる。

□JAPANESE COCKTAILS

シナトラの歌声が聞こえる
「フランシス・アルバート」

(考案)BARラジオ【東京都】

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

東京青山にある「BARラジオ」のオリジナルカクテルで、タンカレーとワイルド・ターキーを1対1で合わせるシンプルなレシピ。その名はフランシス・アルバート“フランク”・シナトラにちなむ。シナトラは、バーボンはワイルド・ターキー、ジンはタンカレーを愛飲したという。

世界大会で名を馳せた名作
「サッポロ」

(考案)BAR やまざき【北海道】

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=撮影/林 直光、『男の隠れ家デジタル』より引用)

札幌すすきのにある「BAR やまざき」の店主・山崎達郎氏(故人)は、200種類以上のオリジナルカクテルを考案したともいわれる。その中でとくに有名なのが、世界大会で特別賞に輝いたウォッカベースの「サッポロ」。1972年の札幌オリンピック開催に合わせて提供した。

文/仲武一朗

提供元・男の隠れ家デジタル

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