知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

酒を飲むのに理屈など不要。バーとて何を気負うことなく愉しめば良い。しかし、そこには知れば知るほど奥深い世界が待っている。一杯の酒に込められた物語を巨匠バーテンダーにお聞きした。

MIXOLOGY HERITAGE バーテンダー
伊藤 学

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

1969年生まれ。クラシックバーテンダーの巨匠。東京日比谷にある同店では、ヴィンテージボトルを豊富な知識とブレンド技術により蘇らせクラシックカクテルとして提供。

目次
■【PART 1】日本のバーの発祥と変遷を探る
BAR HISTORY[バーの歴史]

■【PART 2】誇り高き伝統と格式
HOTEL BAR[ホテルのバー]

■【PART 1】日本のバーの発祥と変遷を探る
BAR HISTORY[バーの歴史]

●日本のバー文化の民主化は戦後の進駐軍がもたらした

米国(アメリカ)を起源とするバーが日本に登場したのは、開国黎明期、万延元年(1860)に横浜外国人居留地で開業したヨコハマ・ホテルに設置されたのが最初とされる。

飛行機のない当時は外国との交流といえば海路に限られていたため、港町に輸入文化のバーができるのは必然の流れだ。ただこのバーはもっぱら外国人を相手にした店であり、日本人には縁遠い存在であった。

日本人がバーで酒を愉しむ習慣を身に付けるのは第二次世界大戦後のことだ。

敗戦を受け東京・丸の内にあった東京會舘がGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に接収され「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」として受託営業を始めた。メインバーではGHQの将校たちが酒を酌み交わし賑わったという。

その後、外国人を相手に腕を磨いた東京會舘のバーテンダーたちが、日比谷や銀座といった日本の社交界の中心地でバーを構えることになるわけだ。

また、東京に限らず進駐軍の将校クラブで日本人がバーやカクテルの知識を吸収する機会も増え、都市文化の象徴でもあったバーが地方に波及する流れが加速した。近年ではカクテルコンペ優勝者が自らの出身地で店を構える事例も多い。

振り返れば日本のバーの歴史は戦後の80年足らずということでもある。日本のバー文化のさらなる発展を期待したいところだ。

□銀座のバーの原型は東京會舘?
「東京會舘(メインバー)」

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

大正11年(1922)の創業当初から国内外の要人をもてなしてきた東京會舘。伝統と格式を備えたメインバーは、今も政財界の要人が集う社交の場となっている。

東京都千代田区丸の内3-2-1 1F
TEL:050-3134-3553

【コラム】日本バー文化のパイオニア
「横浜グランドホテルの系譜」

日本のバー文化の先駆けとなった歴史的ホテル「横浜グランドホテル」は大正12年(1923)の関東大震災で瓦礫と化す。その後継館ともいえる、昭和2年(1927)のホテルニューグランド開業と同時にオープンしたのが、バー「シーガーディアン」だ。

カクテルブックの古典中の古典、サヴォイのカクテルブックに紹介された「ヨコハマ」や、マティーニに使われるドライベルモットの代わりにシェリーを使った「マティーニ・ニューグランド」など、数々の名作カクテルを生み出してきた。

現在その血脈は同ホテル「シーガーディアンⅡ」(本館1階)に受け継がれている。

Q.1 “BAR”の語源はアメリカ開拓時代にあった?

バー発祥の地、アメリカ。その起源は開拓時代にまで遡る。酒樽と客の間に境界線として置いた板が「バー」であり、それが酒場を意味する言葉となったといわれる。

Q.2 日本のバー文化は軍人や船乗りから広がった?

軍隊の基地や交易港の周辺には盛り場がつきもの。外国人相手にバーとして営業する店が生まれ、やがて日本人にも酒を提供するようになっていく。

Q.3 マッカーサーも愛した朝カクテルとは?

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=写真/アフロ、『男の隠れ家デジタル』より引用)

GHQが置かれた東京會舘で、将校たちが朝からでもこっそり飲めるようにジンフィズにミルクを注いだ「會舘風ジンフィズ」を、マッカーサー元帥も好んで飲んだ。

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=シンプルなグラスでミルクを飲んでいるように見える。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

■【PART 2】誇り高き伝統と格式
HOTEL BAR[ホテルのバー]

LEACH BAR(大阪府)

知れば知るほど奥深い「BARの流儀」
(画像=撮影/渡部健五、『男の隠れ家デジタル』より引用)

リーガロイヤルホテル(大阪)内にあるコテージ風のメインバー。BGMのない静寂と、さりげなく飾られた日本民藝最高峰のコレクションが安らぎを与えてくれる。

Q.1 ホテルのバーは時代の最先端だった?

終戦直後から1980年代頃まではホテルバーが主役の時代で、カクテルの流行を発信する役割も担っていた。今やその地位は街中のバーに取って代わられつつあるが、従来のオーセンティックなスタイルからの脱却を図り、ミクソロジーカクテルなど流行を積極的に取り入れたバーも増えてきている。流行という点では両者の違いは少なくなってきているといえるだろう。

Q.2 ホテルのバーはハードルが高い?

以前ほどではないが、伝統や格式を重んじるホテルバーはハードルが高い雰囲気がある。バーテンダーの身だしなみも非常に洗練されており(お馴染みの白いジャケットは清潔感の証しでもある)、利用する側としてもそれなりにドレスアップして行くのが望ましい。間違ってもサンダル履きや短パンなどは避けたい(ドレスコードで禁止されている場合が多い)。

Q.3ホテルバーのメリットは安心感?

知らない土地でバーを愉しむならホテルがお勧めだ。ホテルバーは旅行者(宿泊客)の利用を前提にしているので、一見さんも大歓迎だ。また、大人数で利用できるバーも多く接待に使いやすい。ホテルコンシェルジュを通して予約できるのも便利だ。ちなみに、外国人旅行客を多く受け入れているホテルバーでは、海外にならって酒量が多く、一杯の値段もやや高めの設定。