サマンサタバサ失速の原因

 さて、前置きが長くなった。本稿は、サマンサタバサが衰退した理由についての分析であり、その理由を解きほぐすために、彼らのKFS (Key Factor of Success:重要成功要因)に紙幅を割いた。ここに襲いかかったのが、世界的SDGs(持続可能な開発目標)の機運である。特に、アパレル・ファッショングッズは世界で30%の供給過多(モルガン・スタンレー試算)で、石油産業に続く“環境破壊産業”のトップ2なのである。つい先日も、フランスパリで企業が余剰在庫を破棄する場合、ペナルティを課す法案が通ったという記事が掲載されていた。

 今は、ペットボトルやプラスチックなどアパレルに関係のないものまで繊維に戻し、反毛(生産を逆から進めること、製品から繊維を抽出して原料にし再利用)する、そもそも無駄なものは買わない、一度買ったものは長く着る、などなど、アパレルに関する記事は破棄される余剰在庫にばかり焦点が当たっている。

 こうした機運の中、アパレル各社は円安に伴いコスト増を吸収するため上代(定価販売価格)を下げず、セールでも多くの商品が定価のままだった。しかし、良いものはやはり売れる。セレクトショップや郊外型チェーンなどは好決算を叩き出し、低価格アパレルは苦戦が続いた。消費者は、大事に良いものを長く使おう、という気分になったわけだ。

 こうして、ヴィクトリアズ・シークレット、フォーエバー21など米国でQR型のトレンド商品を追いかけるブランドはことごとく死に絶えた。こうした世界的な傾向を見れば、サマンサタバサの業績が不振な理由が見えてくるはずだ。サマンサタバサ自身のオペレーション上の失策もあっただろう。しかし、それ以上に、世の中が“サマンサ的な”ビジネスを歓迎しなくなってきているということが大きいのではないかというのが私の視点だ。

(文=河合拓/事業再生コンサルタント)

提供元・Business Journal

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