カバンでQRを成し遂げたサマンサタバサ

 そこに現れたのが、サマンサタバサである。正式名称は、株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドが運営するカバンのブランドを指す。このサマンサタバサが一世を風靡したのは、これまでバッグという商材を神棚に飾っておくがごとく、後生大事に一生物として買うといった使い方をしていた女子たちに、「バッグだってファッションだ。気分に合わせてバッグも変えよう」とシーズンやオケージョン、デザインを多彩に展開し、バッグをファッションにしたことによる。

 これは、ユニクロとZARAの関係をみればわかるが、ユニクロはあくまでもベーシックで商品の価値の劣化が起きるまで何年かかかるが、ZARAの服は1シーズン、よくもって2シーズンといったところだろう。このように、バッグもコモディティ商品からアパレルのQR(クイック・レスポンス)型の投入を行い、神棚の位置から普段着のファッションアイテムの一つにしてしまったのである。

 だから、「かわいい」(女子が自分の好きな商品に使う言葉で、正確な意味は本人もわかっていない)バッグを次々と市場に投入し、売っては投入するサイクルをつくり上げたわけだ。さらに、サマンサタバサは自身のネットワークを使い、ミランダ・カーなど海外の一流モデルを惜しみなく存分に使い、我々の目を引いた。

 この手法は、米国で破綻したヴィクトリアズ・シークレットに似ている。ヴィクトリアズ・シークレットは、それまで機能性やサイズ一辺倒だった女性のアンダーウェアをファッションととらえ、「魅せる下着」として短サイクルでスーパーモデルを存分に使いながら、独特のポジションを得たわけだ。