地方移住というと、定年後に夫婦でのんびり暮らす、というイメージを持っていませんか? もちろんそのようなケースもありますが、近年は若年層が子育てしやすい環境を求めて、地方移住する事例が増えています。

6歳未満の子どもを持つ保護者に対して行なった(※)アンケートでは、「地方への移住・転職をしたい」の回答率が41.2%に上り、きっかけのトップは「子育てのため」(29.7%)でした。

この記事では、地方で子育てするメリットについて、体験談を交えてご紹介します。

※NTTデータ経営研究所「都市地域に暮らす子育て家族の生活環境・移住意向調査」

通勤時間が短い分、家族とたくさん過ごせる

1)都心に比べ、待機児童問題の影響を受けにくい

働く親が特に頭を悩ませるのが、保育園に子どもを預けて復職できるか、ということではないでしょうか。毎年1~2月になると保育園の落選通知が届いた保護者が寄せる悲痛な「保育園落ちた!」ツイートが見られます。

待機児童が発生する理由は、需要に対する受け皿の不足。人口が密集する都心では特に深刻です。とはいえ、地方では待機児童問題が一切ないわけではありません。たとえば、岡山市や沖縄市は待機児童数ランキング(2018年4月1日時点)のトップ10に入っています。しかし、都心よりも影響を受けにくいのはメリットです。

2)自然豊かで、子どもの遊び場所が多い

人が多く、建物が林立する都会に比べ、地方は自然に恵まれています。その分、子どもがのびのびと遊ぶことができます。

また、空気が綺麗な場所も増えるので、子どもが気管支喘息を患っていて、大気汚染が心配という方には安心です。農家で育つと、喘息のほかアトピーにもかかりにくいという調査結果もあります。

3)通勤時間が短縮でき、子どもと接する時間が増える

通勤時間は、一般的に都心ほど長く、家族と過ごせる時間が制限されます。帰宅してもヘトヘトでろくに会話もできない状態では寂しいですよね。

一方、地方ほど通勤に時間をかけない傾向が強いので、その分、家族や子どもと一緒に過ごす時間が増えます。総務省が発表した社会生活基礎調査で1日あたりの往復通勤時間を見ると、全国トップが「神奈川県」で1時間45分。最低の「大分県」(57分)との差は歴然です。

自治体は、どんな子育て支援を行なっているの?

移住を促進しようと、自治体は独自の子育て支援を行なっています。一部の事例を紹介します。

■移住者の7割は30代以下:長崎県五島市

五島市の大きさは、横浜市とほぼ同じくらい。島内には、大型スーパーやドラッグストアが点在し、医療機関も充実しており、利便性が高いです。また、保育園は合計で22か所あり、待機児童はゼロです。

五島市では、次のような子育て支援を行なっています。
 

・市内企業の面接時や五島市内における起業のために調査を実施する際の旅費等を助成
・子育て世帯等が移住するための引っ越し費用を補助
・35歳未満の方の奨学金返済を応援

■男性の育休取得を後押し!:新潟県新潟市

新潟市では、男性の育児休業取得を勧めようと、市内にある中小企業に勤務する男性が育休を取ると、事業主と本人に奨励金を支給しています。一定の条件を満たした男性が対象です。

■紙おむつ購入費を助成:広島県世羅町

2017年4月1日以後に生まれた乳児を養育する保護者に、その乳児が使用するおむつ等の購入費用を、乳児1人につき12,000円助成します。

このように、各自治体ではさまざまな施策を行なっています。

畑で土に触れ、体が強くなった

筆者は、実際に都心から地方に移住した方に話を聞いてみました。お話いただいたのは、2017年夏に埼玉県から宮城県栗原市へ移住し、フリーランスとして働く30代の男性。移住のきっかけや現在の暮らしについて伺いました。

家族構成は、Aさんご夫婦とお子さん2人、奥様の両親と祖母の3世帯。奥様の実家で暮らしています。

――なぜ移住をしようと思ったのですか?

子育て環境を整えたい、という気持ちが一番大きいですね。栗原市を選んだ決め手は、「妻の実家であること」と「祖父母のいる環境で子育てをしたかったこと」の二つでした。

――現在のお住まいはどのような環境ですか?また、お子さんの様子はどう変わりましたか?

妻の実家は農業を営んでいるので、周りを山が囲み、自然豊かな環境です。初夏にはホタルが飛び、冬にはマガンや白鳥がやってきます。自宅の畑では野菜、果樹を育てていて、山に行けば山菜が自生しています。

そのため、息子の主な遊び場は「畑」です。農作業の手伝いや、野生する果物の採取で土いじりをすることで、以前よりも体が強くなったように感じますね。

僕が見る限り、息子が最も成長していると感じるのは言葉の発達です。周囲に小さいお子さんがいる家は少ないため、散歩中にはいつも声をかけてもらえます。息子もからすれば、家族以外の大人と触れ合う機会が増えたので、ボキャブラリーの増加が目覚ましく、親として驚いています。

――都心では土いじりをする機会が少ないですものね!お子さんが楽しむ姿が目に浮かびます。ちょっと気になるのですが、移住前に不安はなかったのでしょうか?

ある程度の不便さは受け入れていたので、大きな懸念はありませんでした。何か困ったことがあれば、家族で乗り切ろうと楽観的に考えていました。

ただ、子どもの遊ばせ方に困ることはありますね。近くに室内遊びができる施設はないので、雨の日は子どもを飽きさせずに遊ばせるための工夫が求められます。子どもがストレスを溜めないように、最近では余った部屋にボルタリングウォールをつくろうかと思っています。でも、大きなデメリットは感じません。どうやったら子どもに楽しんでもらえるかを考える想像力が身につきますし、工夫するのは面白いです。

ネットでは、「田舎=不便」や「田舎移住 失敗」といったネガティブなワードがよく見られます。不便さがあるのは事実ですが、そこを家族で一緒に工夫したり、楽しんだりできれば、ストレスフリーな田舎暮らしができると僕は思っています。

文・Yuichi Sonobe/提供・Fledge

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