目次
「クロカンのカタチをした、フツーのクルマ」
ユーザーが真に望んでいたのは、カタチだけのクロカンだった
「クロカンのカタチをした、フツーのクルマ」
この初代CR-V、2リッター級の当時は「ライト・クロカン」や「シティ・オフローダー」と言われたジャンルの車種でしたが、それ自体は特に目新しいものではありません。
国産車でこのジャンル初だったのはスズキの初代エスクード(1988年)でしたが、見た目こそゴツゴツしたクロカン色は薄かったものの、中身はラダーフレーム式の本格クロカンで、オーバースペックだったのはパジェロやランクルと同様。
乗用車ベースのフルモノコック車としては、トヨタの初代RAV4(1994年)が先行したものの、ベベルギアを使ったセンターデフ式フルタイム4WDで十分すぎるオフロード性能を持ち、まだまだ本格的すぎます。
しかし初代CR-Vは、エスクードよりよほどクロカンらしいカタチをしていながら、中身はベースとなった6代目EKシビック…4WDがあるので、厳密には2代目EKシビックフェリオに近い…そのものでした。
しかも4WDとはいっても生活4WDそのものであるスタンバイ4WD…しかも発進時以外は大して役に立たぬと悪名高きデュアルポンプ式でしたから、「4WDのクロカン」らしさは、サスペンションと大径タイヤによる高い最低地上高によるロードクリアランス以外に皆無。
ただし、車重増加に対応した2リッターのB20Bエンジンは十分な動力性能を持ち、シビック譲りの4輪ダブルウィッシュボーンで舗装路の走行性能は秀逸で、ホンダ車ワンメイクのジムカーナ大会では、各種タイプRを差し置き初代CR-Vが2位入賞なんて珍事があったほど。
要するに初代CR-Vとは、見た目から想像されるクロカンらしさはほとんどカタチだけですが、舗装路で普通に走る分には視界良好で走りもいい、「フツーのクルマ」だったのです。
ユーザーが真に望んでいたのは、カタチだけのクロカンだった
初代CR-Vには序章があり、1987年発売でしぶとく継続販売されていた2代目シビックシャトルをベースにRV仕立て、今でいう「クロスオーバー化」したシビックシャトル ビーグルを1994年に発売し、ホンダで数少ないRVとして、意外な人気を得ていました。
その時点で初代CR-Vの開発はだいぶ進んでいたはずですが、開発陣は「ビーグル」の人気に心強い思いをしたでしょう…そう、クロカンなんて形だけでいいんです。
そもそも1990年代RVブームの初期に人気だった三菱 パジェロなどのクロカンは、頑丈なラダーフレームやサスペンション、副変速機つきパートタイム4WDで高い悪路走破力を誇るといっても、大多数のユーザーは好き好んで走りに行かない限り、悪路に縁はありません。
それでいて構造もメカニズムも重くて燃費は悪いし、車検に出せば重量税は高く、舗装路に最適化されたサスペンションではないので、操縦性も快適性も従来からのセダンやハッチバック車など普通の乗用車に劣ります。
スキーブームもあったので全く無用の長物とまでは言いませんが、大多数のユーザーは冷静になると、「なんで街中や舗装路だけ走るのに、こんなクルマを買ったんだっけ?」と疑問を持つわけです。
しかしカッコイイのは確かだから、これで中身は普通のクルマってのがあればいいんだよね…というタイミングでポンと現れたCR-Vに、売れない理由などありますでしょうか?
RVブームの中でも不必要に過熱していたクロカンブーム、そのオチは「ユーザーが本当に望んでいたのはクロカンではなく、クロカンのカタチをしたクルマ」でした。