国内外に広げていく可能性があるパイナップル

沖縄・石垣島の農業や漁業の可能性とは。
(画像=『石垣島SUNファーム』の直売店。加工場を併設している。,『Business Journal』より 引用)

「スナック」「ピーチ」「ジュリオスター」「ゴールドバレル」……。これらはパイナップルの種類で、見た目も味わいも異なります。手でちぎって食べられる「スナックパイン」は酸味が少なくて甘みが強く、「ピーチ」はその名の通り桃のような味わいです。海外産のイメージが強いパイナップルですが、実は石垣島でも生産されています。

沖縄・石垣島の農業や漁業の可能性とは。
(画像=直売店ではティダパインジュースのほかアイスバーも販売。,『Business Journal』より 引用)

『石垣島SUNファーム』は、栽培から加工・販売までを行う農業生産法人です。沖縄県の最高峰である於茂登岳(おもとだけ)とバンナ岳に挟まれた水が豊富な地域で、パイナップル栽培しています。「ここは緩やかな斜面なので水はけも良く、栽培に最適な土壌が備わっています」と同社の當銘敏秀(とうめとしひで)さんは話します。実は沖縄でパイナップル栽培が可能なのは沖縄島北部、西表島とここ石垣島のみで、いずれも高い山がある地域だそうです。「宮古島など山がないところは時代によっては海中にあったため、現在は陸地でも掘ってみると石灰岩が出てきて、アルカリ性の土壌のためにパイナップルは栽培できません。それとは対照的に、高い山があるところは海中に沈んでいた時代も陸上だったため、現在もそのような場所は酸性土壌で栽培に向いています」と當銘さんは説明しました。

沖縄・石垣島の農業や漁業の可能性とは。
(画像=パイナップルを使った加工品を開発。フランス生まれの薄い焼き菓子・ラングドシャ(写真)のほかパインあめ、ジャム、石けんなども販売する。 ,『Business Journal』より 引用)

 同社は元々、関東にある小中学校の学校給食用に果実のままのパイナップルを出荷していましたが、他校からも欲しいという要望に応えて栽培面積を増やすことになりました。しかし、収穫期を迎えたパイナップルは大きさにばらつきがあり、サイズをそろえる必要がある学校給食用には適さないものも出てきてしまうことから、加工・販売までを手がける6次化に踏み切ることにしました。パイナップルを重さ30〜40グラムにカット・冷凍したものを年間で約40万食分生産して学校給食に供給するほか、さらにそこで出た端材をジャムやアイスクリームに加工して販売しています。また、青果の50〜60%も占める廃棄部分をこれまでは畑にすき込んでいましたが、この部分には果汁や果肉がまだ残っていて栄養価も高いことから、パイナップルの芯から石けんなどを作るなど、これらを活用した食品以外の商品開発も當銘さんは行っています。

沖縄・石垣島の農業や漁業の可能性とは。
(画像=国産パイナップルを国内外に広げていきたいと語る『石垣島SUNファーム』の當銘敏秀さん。,『Business Journal』より 引用)

 パイナップルは、実は追熟しない果物。海外産は輸送期間などを考えて収穫されるのに対して、国内産は熟度を最適に合わせて消費者に届けられるメリットがあると當銘さんは話します。「まだまだ国内産の消費を広げていくチャンスがあると思っています。さらに、年中生のパイナップルが食べられるような海外に日本産を輸出するのは難しいですが、ジャパンブランドの信頼があることから台湾の商談会ではお菓子などの加工品が欲しいという声を多く聞きました。そこにもチャンスがありそうだと思いました」。食品開発を行う事業者と提携を組み、今後は多様な加工品に挑戦していくつもりです。