沖縄県の石垣島は東シナ海に浮かぶ八重山諸島の一つで、同県では沖縄島、西表島の次に大きな島です。温暖な亜熱帯海洋性気候に恵まれているため、リゾート気分を満喫したい観光客が国内外から集まり、にぎわいを見せています。
この温暖な気候を生かして、石垣島では漁業や農業も盛んです。ミーバイとスギの養殖、パイナップル、パパイヤの栽培を行う生産者を訪ねて、生産の様子などを伺いました。
持続可能性を見据えた漁業

マグロやイカなどの漁船漁業や、モズク、クルマエビ、海ぶどうなどの養殖業が盛んな石垣島。八重山漁業協同組合に所属する日系でブラジル出身の川畑ジョナタスさんは、ミーバイとスギの養殖を行っています。ミーバイは沖縄の方言でハタ類のことで、上品な白身で旨味があり、和洋中などさまざまな料理との相性が良いのが特徴です。1992年から沖縄県水産試験場 (現沖縄県水産海洋技術センター)で種苗生産研究が開始されて、96年には沖縄県で初めて生産に成功し、翌年には20万尾を超える種苗量産に世界で初めて成功しました。沖縄県の養殖魚のホープとして、海面と陸上の両方で養殖が行われています。ここ石垣島では約30年前から養殖が開始されて、現在では川畑さんをはじめ9世帯の漁師が養殖に取り組んでいます。

沖縄県栽培漁業センターで飼育しているミーバイからとった卵は、ふ化させて稚魚を6cm程度の大きさまで育てた後に県内各地の生産者へ供給されて、ここ石垣島では約3年をかけて出荷サイズになるまで育てています。与える餌を島外から運ぶとなると送料がかかるため、餌づくりもここで養殖開始当初から手がけています。「市内の鮮魚店から出た魚の残渣(ざんさ)を一度冷凍してから、島内の農家から引き取った米ぬかと混ぜて餌にします。魚の残渣をそのまま海にまくと流れ出た血の臭いに引き寄せられて、他の魚が養殖場に近寄ってきて網を破る恐れがあるので、ペレットに加工しています」と川畑さんは説明します。

一方のスギの養殖は約3年前から始めました。ミーバイを出荷するまでには約3年の月日を要してその間に餌代等の経費がかかることから、養殖期間1年ほどでミーバイと同じ大きさになるスギを選びました。スギの味はカンパチに似て、沖縄の魚には珍しく脂のりが良いのが特徴です。「ブリや大トロのように脂がのっておいしいですよ」と川畑さんも太鼓判を押す味わいです。

魚を健康的に養殖するため、月に一度、11月からは週に一度は1つのいけすに1トン以上いる魚を取り出して、真水で洗っています。このような重労働も伴いますが、子どもの頃から海に憧れて日本で漁業を学んできた川畑さんは、漁業に対して愛情を持ち、惜しみない手間かけて魚を育てています。「地元では販売単価をなかなか上げられないので、自分たちでも販売ルートを開拓しています。海の資源が枯渇しないように生態系を考えながら、持続可能な漁業に取り組みたいと思っています」と川畑さんはこれからも漁業に力を注いでいきます。
ミーバイを使った料理は、石垣市内の飲食店で食べることができます。県外ではまだ珍しいため、石垣島を訪れた際はぜひ味わってみてください。地魚料理が自慢の居酒屋「まるさ本店」では、通常メニューでミーバイの刺身や煮付けが食べられますが、事前に予約(数週間前)をすればこれ以外のメニューを注文することが可能です。
また川畑さんのミーバイを直接買いたい方は、八重山漁業協同組合もしくは川畑水産で購入することが可能です。
『川畑水産』
住所:沖縄県石垣市字崎枝530‐133 電話番号: 070‐9023‐7788 営業時間:9:00~17:00 定休日:日曜
『八重山漁業協同組合』
住所:沖縄県石垣市新栄町77‐3
電話番号: 0980‐82‐2448 営業時間:9:00~17:00 定休日:土曜、日曜




