相手の一次感情に寄り添う

 でもねでもね、自覚がある人はまだいいと思うの。「いけない、私変わらなきゃ」って、けなげじゃありませんか。

 大変なのは自覚なくキレる人の怒りに巻き込まれたときです。グループLINEでも「えっ、そこ、そんなに怒るとこ?」みたいなポイントでキレちゃう人が急増中だそうですよ。イライラがたまっているのかもしれませんが、さて、こんな時どうする?

 前述した書籍『アンガーマネジメントトレーニングブック』には巻き込まれたときの対処法も載っていました。要約すると、第一に、こちらも感情的になって言い返さないこと。こじれるだけだからね。相手の「べき」(価値観=コアビリーフ)を否定しないことです。

 できれば相手の一次感情を考えてみましょう。「この人は本当は困っているんだ」「どうしたらいいのか不安に思っているんだ」とわかれば共感もしやすく、話を聞く姿勢をとりやすくなります。そうすると相手も「気持ちをわかってくれた」と態度を柔らかくしてくれることが多いのだそう。

 そういえば昔、取材の電話をかけたら「気軽に電話するな、こっちはそれどころじゃない」と怒られたことがありました。

 アレルギー対応食の先駆けみたいなお店だったから、さぞや言い尽くせぬ苦労話があるんだろうなと30分ばかりクレームというか愚痴に耳を傾けていたら、言いたいことを言ってスッキリしたのか「いろいろ言っちゃってごめんね」と取材OKをもらえたんです。これ、今みたいにメールだけのやりとりだったらアウトだったろうな……。

冷静に具体的にリクエストを伝える

 では相手の「べき」をむりやり押しつけられたときは? 対処法のひとつは「異文化の人が言うこと」と思ってさらりと受け流すことです。

イライラを見える化せよ! ストレスフルな毎日への処方箋「アンガーマネジメント」
イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)(画像=『BCN+R』より 引用)

 もうひとつは事実と一緒にこちらの想いや要望を冷静に伝えること。著者の戸田さん自身も「女性は子どもがいたら出張なんかすべきじゃない」「子どもが小さいうちから働いていたら子どもがグレるよ」などと言われたそうです。

 こういうときに「はあ?それ男性にも言います?言わないですよね?」とか「ププ。3歳児神話かよ」などと、ケンカ腰になったり冷笑したりしてはいけません。

 戸田さんは関わりの薄い人から言われたときは「そう考える人もいますよね」と軽やかにスルー。ある程度関係性の深い人の場合は「家族の同意のもとで判断していることなので、これ以上言わないでほしい」とはっきり(かつ冷静に)伝えたそうです。

 相手の怒りをコントロールしようと思わず、ネガティブな感情は相手のものだと割り切って引っ張られない。こちらが困っていることへの対処を冷静に具体的にリクエストする。こういった姿勢が大切なんですね。

 心理的な距離をとって、主語を相手に置き換えて考えてみるのもよさそうです。