生コーヒー豆を供給するシステムでスペシャルティ・コーヒーを家庭に配達

自家焙煎が簡単になっても、生コーヒー豆の調達方法が気になる人もいるかもしれない。ansā社は消費者が気軽に自家焙煎できるよう、焙煎機の開発・販売だけでなく生コーヒー豆の供給システムも構築。生豆の販売・配送サービスを展開している。

世界中のコーヒー農園を自社で選定して豆を調達する。Image Credits:ansā

仲介業者やカプセル包装などの手間を回避しつつ、シングルオリジン、スペシャルティコーヒー、100%アラビカ豆を100%リサイクル可能な容器で消費者に直接届けるシステムだ。プレミアムなシングルオリジンの生コーヒー豆を直接調達することで、コーヒーの品質向上はもとより原産地にポジティブな影響を与えるという企業ミッションも果たすことになる。

「我が社は“典型的なコーヒーカンパニー”ではない」と主張するansā社が、企業として推進するサステナブルな取組みである。

起業の芽吹きは日本のコーヒーチェーン、社名は日本語の「アンサー」

CoffeeTech分野のスタートアップであるansā社は、Yuval Weisglass氏、Matan Scharf氏、Jonathan Scharf氏の3人によってパンデミック中の2020年末にイスラエルで設立された。
PR Newswireの報道によると、社名の「ansā」はなんと日本語の「アンサー」だそうだ。起業のきっかけは日本で開催されたビジネスカンファレンス(コーヒーとはまったくの無関係)でYuvalさんとMatanさんが出会ったこと。2人は日本のコーヒーチェーンでカプチーノを飲みながらコーヒービジネスについて盛り上がったという。

現在同社でXOを務めるJonathanさんはMatanさんの弟で、コーヒーを直接調達・焙煎するチェーン店「MAE Cafe」の創業者。Matanさんが弟をYuvalさんに紹介し、3人での起業となった。

Yuvalさんはサイバーセキュリティ「TowerSec」の元共同設立者。マーケティング担当のMatanさんはCheck PointやSynopsys、 Harmanなどの企業でプロダクトリーダーを務めた経歴がある。Image Credits:ansā

NYにコンセプトストア開設、飲食店用に「Variety e23」も

2022年にはアメリカのダラスにも拠点を構え、ansā Roasting, Incを設立。持続可能性の観点から先進的な市場であるニューヨークのブロードウェイに同社初のコンセプトストアを設けた。2024年3月時点で、Google Mapでは主にカフェとして50人から☆4.9という高い評価を受けている。

コンセプトストアはカフェとしても利用できる。Image Credits:ansā

ストアでは焙煎したての豆で淹れたコーヒーを提供するのはもちろん、コーヒー豆や焙煎機も販売。他に、予約制のワークショップも開催されており、専門家がフレーバーやアロマについて講義してくれる。

このコンセプトストアの人気ぶりが示すとおり、同社のロースターは家庭だけでなくカフェ、レストラン、ホテルのロビーなどでも活躍する。しかし、飲食店では当然1杯分ずつ焙煎するのは非効率。そこで役に立つのが「Variety e23」だ。

Single d23と比べると少し高さがあるVariety e23。Image Credits:ansā

一度に焙煎できる量が多く、本体上部のろうと型受け皿には900グラムまで、焙煎が終わった豆が溜まる容器には1200グラムまで豆が入るとのこと。基本の構造はs23と同じだがe23の方がやや大きく、幅34.3×奥行き24.0×高さ52.8センチとなっている。

Variety e23は一度に焙煎できる量が多い。Image Credits:ansā

生の豆が1杯のコーヒーになるまでのプロセスにおいて完璧なソリューションを提供するため、ansāのロースターは通常の飲食店用コーヒーマシンやその他の抽出機器と連携するように設計されている。「静かで煙を出さず、触っても熱くない」小型焙煎機なので、チェーンのコーヒーショップはもちろん個人経営のカフェでも導入がしやすそうだ。