後半に難局を迎えた横浜FM
横浜FMが攻め手を探るなか迎えた後半2分、同クラブDF永戸がこの日2度目の警告を受け退場。布陣を組み直す必要性が出てきたなかで、キューウェル監督のある決断が勝敗の分かれ目となった。
4バックのチームがひとり退場者を出した場合、[4-4-1]の守備隊形を敷くのがサッカー界では主流だが、この日キューウェル監督が選んだのは[4-3-2]。永戸の退場直後は[4-4-1]の隊形で構えたが、後半8分にDF渡邊泰基とMF山根陸を投入し、布陣を[4-3-2]へ組み直し。ロペスと宮市亮(前半43分より出場)の両FWを最前線に残し、速攻からの得点を狙った。
威力を発揮した[4-3-2]
[4-4-1]ではなく[4-3-2]。このキューウェル監督の決断が、横浜FMの最大の勝因だ。
[4-4-1]であれば4バックと4人の中盤でサイドと中央を満遍なく埋められるが、最前線がひとりになるため、奪ったボールを速攻へ繋げにくい。また、山東の布陣が4バックのため、相手2センターバックと横浜FMのワントップで1対2の数的不利が発生する。これを山東に利用され、2センターバックを起点にボールを自由に運ばれたり、パスを好き放題散らされる可能性があった。
キューウェル監督が[4-3-2]を選んだことで、相手2センターバックと横浜FMの最前線が同数に。ロペスと宮市(2トップ)が相手2センターバックの配球やボール運びを制限し、山東のパスワークをサイドからに限定。山東の空中戦は脅威だったが、横浜FMとしてはこれさえ凌げば良い展開となった。
迎えた後半30分、横浜FMのDF松原健(右サイドバック)が放ったロングパスに宮市が反応。同選手が敵陣右サイドでボールを収め、ペナルティエリア右隅へ走った山根にパスを送ると、山根がすかさずクロスボールを供給。このパスに逆サイドで待っていたロペスがダイレクトボレーで合わせ、横浜FMが先制した。
後半35分にも快足FW宮市がロペスのヘディングパスに反応し、敵陣ゴール前で山東DFガオ・ジュンイーと並走。相手GKワン・ダーレイとの1対1になりかけたところで転倒した。
オンフィールド・レビュー(※)の末、主審はガオと宮市が接触したと判断。これが著しく不正なプレーと見なされ、ガオにはレッドカードが提示されている(退場理由は公式記録より)。横浜FMの先制ゴールと相手選手を退場に追いやった場面は、宮市とロペスを前線に残す[4-3-2]への布陣変更を決断したキューウェル監督によってもたらされたと言えるだろう。
(※)ビデオアシスタントレフェリーの提案をもとに、主審が自らリプレイ映像を見て最終の判定を下すこと。