テレワーク中の中抜けの扱い方

最近はテレワークを取り入れる企業が増え、テレワーク中の中抜けをどう扱えばいいのか悩むことが多くなりました。テレワーク中の中抜けの注意点や取り扱いについて解説します。

テレワークで中抜けが多くなる理由

テレワークはオフィス勤務に比べて中抜けが多くなる傾向にあります。通勤中や休憩中に用事を済ませづらくなること、自宅で仕事をする場合は家事や育児、介護などと仕事を両立しなければならないことが理由です。

テレワークは従業員の通勤の負担を軽くしますが、通勤がなくなるからこそ、通勤中や休憩中に用事を済ませるのが難しくなります。

たとえばオフィスの近くや通勤経路に役場やクリニックがあれば、通勤中や休憩中の用事を済ませられます。しかし、自宅がこれらの施設から離れている場合、休憩中に出かけても時間内に戻ってこられないかもしれません。

自宅で仕事をするとなると、どうしても家事や育児、介護などが気にかかります。どうしても対応せざるをえない用事ができたり、「テレワークで通勤がないんだから、仕事の合間に家事くらい済ませてよ」と、パートナーに言われるケースもあるでしょう。

基本的な扱い方はオフィス勤務と同じ

テレワーク中でも、中抜けの基本的な扱い方はオフィス勤務と同じです。

中抜けを休憩時間として扱うなら、勤務時間が所定労働時間に足りるよう、始業や就業の時間を調整しなければなりません。時間単位の有給として扱う場合、1日2回の勤務とする場合も、オフィス勤務での中抜けと同じように扱います。

無断の中抜けは服務規律違反(サボり)になりかねない

オフィス勤務でもテレワークでも、無断の中抜けは服務規律違反になりかねません。平たく言うと、無断で中抜けして長時間戻らなかった場合、会社から「サボっている」とみなされてしまうでしょう。

服務規律違反とみなされると、減給や停職、降格などの懲戒処分を受ける恐れがあります。さすがにお手洗いやちょっとお茶を淹れる程度なら毎回報告しなくても問題ないでしょうが、家事や育児でしばらく離席するなら、報告・相談した方がいいでしょう。

中抜けに関する注意点

中抜けに関する注意点を4つ紹介します。正しい勤怠管理ができるよう、会社側はもちろん、従業員側でもこれらの注意点を把握しておきましょう。

中抜け中に業務をしてはいけない

中抜けを休憩時間として扱うとしても、有給や1日2回の勤務として扱うとしても、中抜け中は従業員が業務から解放されていなければなりません。そのため、中抜け中に業務をするように命令したり、みずから率先して業務をしたりしてはいけません。

何らかの業務をしている時間は労働時間となり、給与が発生するのです。

業務はしないが「待機命令」がある場合

中抜け中に業務はしないものの、待機命令がある場合も、その時間は労働時間として扱われます。たとえば「中抜け中に取引先から電話がかかってきたら、電話に出てね」のようなケースです。

実際には業務をしないが、業務命令や電話があったらすぐに対応できるように待機している時間を「手待ち時間」といいます。中抜けを休憩として扱う場合、手待ち時間は休憩時間として認められません。時間単位の有給や1日2回の出勤として扱う場合、中抜け中は勤務時間外となり、従業員に待機をさせてはいけません。

会社都合の移動時間は中抜けに含まれない

会社都合の移動時間や、移動中に業務をさせる場合、移動時間は中抜けに含まれません。たとえば営業担当者が商談先に電車で移動したり、私用で中抜けした従業員に対して「移動中にこの仕事を進めておいて」と指示したりした場合、その移動時間は労働時間に含まれます。

中抜けのルールを決め、就業規則に明記する

中抜け中の時間をどのように扱うのか、さまざまなケースを想定し、ケースごとの対応ルールを明確にしておきましょう。ルールが決まっていないと、給与計算や労働時間の管理が煩雑になったり、「人によって対応が違う」と従業員から反発が出たりするかもしれません。

ルールを決めたら、それを就業規則に明記することも大切です。ルールを決め、それをすべての従業員が確認できるようにすることで、公平な労働環境をつくれます。

なお、中抜けを休憩時間として扱う場合、始業時間の繰上げや終業時間の繰下げが必要になります。この場合、労使協定の締結は不要ですが、就業規則への明記が必要です。

労使協定の締結が必要なケース

中抜けを時間単位の有給として扱う場合、まずは時間単位の有給取得を認める旨の、労使協定の締結が必要です。労使協定では、次の項目を定めなければなりません。

【時間単位有給の対象者の範囲】

事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時間単位有給の対象者の範囲を定められます。「育児や家事を行う従業員」のように、取得目的により対象範囲を定めることは認められていません。

【時間単位有給の日数】

年5日の範囲内で日数を定めます。

【時間単位有給1日分の時間数】

1日分の有給が、何時間分の時間単位有給に相当するのかを定めます。1時間に満たない端数は時間単位に切り上げます。

【1時間以外の単位で与える場合の時間数】

2時間単位のように、1日の所定労働時間を上回らない時間を単位として定められます。ただし、1.5時間(1時間30分)のような単位ではなく、1時間、2時間のような整数の時間を定めなければなりません。

参考:時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!|厚生労働省