中抜けとは業務時間内に仕事から離れ、健康診断や予防接種、私用などを済ませることです。飲食業や旅館業などの「ピークタイムとアイドルタイムの差が激しい業種」では、長めの休憩時間として中抜けを利用するケースも多いです。

本記事では中抜けの意味や扱い方をまとめて解説。テレワーク中の中抜けの扱い方や、中抜けを適切に運用するための注意点も紹介します。


本記事の内容をざっくり説明



  • 中抜けの意味や別の言い方、休憩との違い

  • 勤怠管理やテレワークにおける中抜けの扱い方

  • 中抜けに関する注意点



中抜けの意味とは?

中抜けとは、業務時間内に仕事を離れることです。飲食店で忙しくない時間帯にスタッフを長めの休憩に出すような「会社都合の中抜け」と、子どもの送迎やスタッフ自身の用事を済ませるための「自己都合の中抜け」があります。

中抜けの別の言い方

業務時間内に仕事から離れる中抜けは、離席や中座などとも言い換えられます。

たとえば担当者の不在中に取引先から電話がきた場合、「〇〇は私用により離席しております。〇時に戻る予定ですが、折り返しはいつ頃がよろしいでしょうか?」のように伝えると丁寧です。

休憩との違い

中抜け中は給与が発生せず、その間業務命令を出してはいけません。この性質は休憩と似ていますし、中抜けを休憩時間として扱うことも多いです。

しかし、厳密には中抜けと休憩は違います。休憩は労働時間が6時間を超える場合に最低45分、8時間を超える場合に最低1時間与えなければなりませんが、中抜けにこのような規定はありません。

飲食業や旅館業など、忙しくない時間帯が長い業種では、長めの休憩として中抜けを出すことも多いです。しかし、事務のような時間帯による忙しさの差がない業種で私用による中抜けをする場合、休憩とは別に中抜けを取ることもあります。

勤怠管理における中抜けの扱い方

次に、勤怠管理における中抜けの扱い方について解説します。

休憩時間として扱う

中抜けを休憩時間として扱う場合、中抜けの時間の分、始業時間の繰上げか就業時間の繰下げをします。これは最もシンプルで運用しやすく、私用による中抜けで多く取られる方法です。

この場合、従業員は中抜け中に私用を済ませたうえで、所定の労働時間を確保します。

たとえば所定労働時間が8時間、中抜け時間が2時間だとしましょう。通常よりも2時間早く始業したり2時間遅く終業したり、始業と終業を1時間ずつ繰上げ・繰下げしたりすることで、8時間の労働時間を確保します。

この方法には「シンプルで運用しやすい」「従業員は有給を使わずに済む」というメリットがありますが、始業や終業の時間がずれることで従業員の生活リズムが乱れやすくなるデメリットもあります。

時間単位の有給として扱う

中抜けを時間単位の有給として扱う場合、先述の休憩時間として扱うケースと異なり、始業や終業の時間をずらす必要はありません。この場合は中抜け時間が休暇になるため、その日は所定労働時間を働く必要がないためです。

企業は時間単位での有給取得を従業員に強制できません。そのため、この方法で中抜けをさせる場合、従業員の同意が必要です。

この方法は始業・終業の時間をずらす必要がなく、従業員にとって生活リズムを崩さずに済むメリットがあります。企業にとっても、有給消化を促進できるメリットがあります。

ただし、時間単位で有給を取得できるのは年5日の範囲内です(労働基準法第39条第4項による)。企業には「有給付与日数が10日以上の従業員に対して年5日の有給を取得させる義務」がありますが、時間単位の取得分を、取得させる義務の5日分から差し引くことはできません。

また、時間単位での有給取得は労使協定の締結と就業規則への記載が必要です。

中抜けを挟み1日2回の勤務として扱う

中抜けを挟んで1日2回の勤務として扱う方法もあります。たとえば旅館業では忙しい朝の時間帯が終わった後に一度退勤し、夕方の再び忙しくなり始める時間から再び出勤する、という勤務形態が多いです。

この方法では中抜けを休憩時間として扱わないため、各勤務の労働時間と休憩時間に気を付けましょう。たとえば朝に6時間以上働くなら、朝の勤務時間のうちに45分以上の休憩を取らなければなりません。

健康診断や予防接種などの中抜けの扱い方

健康診断や予防接種など、会社が従業員に受けさせる検診があります。これを従業員の勤務時間中に中抜けさせ、済ませる企業は多いです。

この中抜けを賃金が発生しない時間とするか、賃金が発生する時間とするかは企業に委ねられています。検診は業務ではないため賃金を支払う義務はありません。厚生労働省は、この中抜けをどのように扱うかは労使協定で定めるべきとされています。

ただ、厚生労働省は「円滑な受信を考えれば、受信に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とも発信しています。また、法定の有害業務に従事する労働者に対して行われる「特殊健康診断」は業務の遂行に直接関係する健診であるため、中抜けであっても賃金を支払わなければなりません。

参考:健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?|厚生労働省