2020年6月22日、ベルギーにもほど近いフランス北部アルデンヌにあるシャトー(城)で、現地警察や法医学者らによる大掛かりな捜査が始まった。目的は、アルデンヌから200キロも離れたパリ近郊で2003年1月に行方不明になった当時9歳の女児、エステル・ムザンさんの遺体の捜索である。

 このシャトーにはかつて「アルデンヌのオーガ」と呼ばれる連続殺人犯、ミシェル・フルニレ(現在78歳)とその妻、モニク・オリビエらが暮らしていた。夫妻は少なくとも7人を殺害した罪で2003年に逮捕され、フルニレには終身刑、共犯のオリビエには懲役28年の刑がすでに言い渡されているが、彼らに殺害された被害者はまだ他にもいると囁かれていた。

【閲覧注意】9歳少女らを次々暴行して殺害! 超絶シリアルキラー夫婦「アルデンヌのオーガ」…半端ない処女信仰が招いた悪夢全貌!
(画像=ミシェル・フルニレとモニク・オリビエ。画像は「Murderpedia」より引用,『TOCANA』より 引用)

 そして2020年3月、収監中のフルニレが、かねてより犯行を疑われていた事件の一つ、エステルさん行方不明事件について自白したのである。フルニレはエステルさんの遺体のありかについては黙秘しているが、警察はかつてフルニレが所有していたシャトーの敷地内に、その遺体が埋められている可能性が高いとみている。

■アルデンヌのオーガ、その苦痛に満ちた前半生

 ミシェル・フルニレは1942年4月4日、フランス北東部アルデンヌ県セダンの労働者階級の家に生まれた。一説によると、母親はフルニレが生まれる前、セダンにいたドイツ将校と関係を持っていたともいう。

 フルニレは幼少期についてあまり語りたがらないというが、精神科医の聞き取りで明らかになったところによれば、4~6歳くらいの頃、母親から性的な虐待を受けていたようだ。この母親は精神を病んでいたらしく、金属加工の労働者であった父親は離婚を選び、フルニレを含む3人兄弟を引き取った。しかし、この父親もまた重度のアルコール依存症を抱えていた。

 やがて学校に入ると、フルニレは多くの問題を起こし、詐欺師、嘘つき、泥棒などと呼ばれるようになった。一方で文学にも興味を持っており、会話の中でドストエフスキーやカミュの一節を引用する知的な一面もあったそうだ。長じては空軍に入隊、除隊後は大工や技術者として働いていたらしい。