EU内の結束を強化

ウクライナ危機を契機に加盟国27カ国内で対立があって統合が難しかったEUに結束が生まれてきた。ロシアのウクライナ侵攻に直面し、ロシア制裁で一致する一方、ウクライナへの武器供給が広がっていった。ブリュッセルと言論の自由や司法問題で対立してきたポーランドは1日現在、35万人のウクライナ避難民を受け入れた(ポーランドには約400万人の欧州最大のウクライナ・コミュニティが存在する)。親ロシア派と受け取られてきたハンガリーのオルバン首相はプーチン大統領のウクライナ侵攻を批判している(武器の供給は拒否)。

EUだけではない。NATOでも対ロシア制裁で30の加盟国は一致。ロシアから地対空ミサイル「S400」を購入する一方、ウクライナには無人機を輸出してきたNATO加盟国トルコはここにきてロシア批判を高めている、といった具合だ。米のホワイトハウスでは、「プーチンこそNATO加盟国を結束させた最大の貢献者だ」という声が聞かれるという。

プーチン氏はウクライナに侵攻し、ゼレンスキー現政権を打倒し、親ロ派の傀儡政権を発足させる計画だったといわれるが、実際は、EU、NATOを結束させ、ロシアがソ連時代から政治的武器として利用してきた欧州の中立主義、平和主義を終焉させてしまった。「大誤算」だろう。

ウクライナ情勢がどのように転ぼうとも、ロシアを取り巻く情勢はウクライナ侵攻前と「その後」ではまったく異なってくることは間違いない。ひょっとしたら、ロシア内の民主化運動が勢いを取り戻してくるかもしれない。

最後に、ソーシャルメディアで人気を呼んでいるコメントを紹介する。「ウクライナ国民は(大統領選で)ピエロ(元コメディアンのゼレンスキー大統領)を選出し、彼は(真の)大統領となった。一方、ロシア人はプーチン氏を大統領としたが、彼は国際社会のピエロとなった」


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

文・長谷川 良/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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