資金繰りもクローズアップ

 5期連続の最終赤字となり、楽天Gの資金繰りもクローズアップされている。楽天Gはこれまで携帯電話事業の設備投資に1兆円以上を投下し、その資金の大半を社債発行で賄ってきたが、24~25年には総額8000億円の社債償還を迎える。14日の決算発表会見で同社は、24年の約3200億円についてはすでに既発債の公開買い付けや起債などで償還額を約1000億円に圧縮したと説明。25年に償還期限を迎える個人向け社債については、借り換えリスクは僅少だとの見解を示した。

 楽天Gは資金繰りのため積極的に策を打ってきた。23年7月には楽天証券の持ち株会社、楽天証券ホールディングス(HD)の新規上場を東京証券取引所に申請。だが、競合するSBI証券が日本株の売買手数料をゼロにすると同年8月に決定したことを受け、楽天証券も手数料をゼロにすると決定。売買手数料収入が減るため上場が難しくなり、楽天Gは上場の代わりに楽天証券株を、みずほ証券に売却する方針に転換。楽天Gは楽天証券株の約3割を、みずほ証券に売却する。

 同年12月には、傘下の楽天銀行の売り出し株式の売却が完了し、約600億円を調達(楽天銀行株の保有比率は63%から49%に低下)。楽天ポイントサービスを担う楽天ペイメントを傘下に持つ楽天カードを上場させるとの観測も流れている。

 今後の楽天Gの先行きについて前出・鈴木氏はいう。

「この資金繰りが楽天グループ最大の経営問題です。いまのところ、まだ24年分の資金の借換え目途はついているといいますが、企業存続を左右するほどの不安要素であることは間違いありません。話の前提として、25年中の通期黒字化が難しいと想定され、かつモバイル事業を止めることも得策ではないということを想定した場合、現実的な生き残り策は2つです。

 ひとつは楽天証券、楽天カードなど虎の子ともいえる金融ビジネスを手放していくことで有利子負債を減らしていくこと。これは現実的な策ではありますが、楽天経済圏の強みを失っていくこととも同義なので、選択肢としてはあまりよい方策とはいえません。

 もうひとつは楽天経済圏の強みが最大限存在するうちに、資金繰りを解消してくれる可能性のある企業と資本提携を進めることです。私はこれまで、アメリカのアマゾンと楽天の合併の可能性やKDDI・ローソンとの合併の可能性を記事にしてきました。そのような大規模な資本提携で困難を乗り切るというのが、楽天が生き延びる方策としては一番現実的なのではないでしょうか」

 金融業界関係者はいう。

「黒字化の見通しが立たない携帯事業のために、グループの稼ぎ頭である金融事業や楽天経済圏の要である楽天ポイントサービスを司る事業を徐々にではあるが手放しつつあるのは、かなりリスキーというか、ちょっと理解しがたい。携帯事業自体に加え、そこで培った技術を楽天シンフォニーを通じて海外に輸出して稼ぐという戦略を掲げているが、三木谷会長がなぜここまで携帯事業にのめり込んでいるのか本音が見えない。このままだと赤字の楽天モバイルに楽天Gが潰されてしまう」

 23年ぶりに無配となることも発表した楽天G。株主からの目線は厳しくなる一方だ。