■ ロマンス詐欺の第一章 自身の置かれている悲しい境遇でさりげなく同情を誘う
1月18日、接触を図るべく、潜入用アカウントからフォローを行ってみると、すぐにフォローを返され、DMが送られてきました。お互いに軽い挨拶を行うと、相手が自己紹介を始めます。
なんでも「モントリオール出身のカナダ人」で、「医療活動のためガザ地区の配置されています」とのこと。今現在も攻撃を受けている紛争地域のはずですが……のんきにDMを送っている場合なのでしょうか。
聞くところによると、名前は「フローレンス」と言い、性別は女性。「退職したら日本に行って、医療分野で起業する」ことを夢見ているのだそう。これがもしも真実であれば、大層立派な目標です。
日をまたいで、さらに会話を進めていくうちにフローレンスのプロフィールが解像度を増していきます。過去に戦争で夫を亡くしており、両親もおらず、家族は娘がひとり。カナダの寄宿学校に通っており、今は離れて暮らしているのだそう。
正直この辺りで、ロマンス詐欺の類である気がしてきましたが、はっきりするまではやり取りを続けることに。すると、1月20日に相手から「LINEでやり取りをしませんか?」という提案がありました。
LINEに誘導するのも典型的なネット詐欺の手口ではありますが、もう少し探りを入れたいためこれを快諾。以降、社内で「特級呪物」と呼ばれている「潜入用LINEアカウント(フレンド全員が過去に潜入したときに繋がったネット詐欺師)」にてやり取りを行うことにしました。
■ ロマンス詐欺の第二章 日常的なやり取りの中で時折悩みを打ち明ける
コミュニケーションの場をLINEに移行したのが1月21日。軽い挨拶ののち、なぜかいきなり「ここはフィレンツェです」と、所在地を誤って伝える凡ミスを犯していましたが、敢えてこれはスルー。ここで架空の猫、バギーについて質問してみることにしました。
会話によると「現在はバギーとも離れて暮らしており、カナダの猫保護施設で大切に育てられている」とのこと。「それ、人様の家の猫ちゃんですよね?」とツッコミを入れたい気持ちを押さえつつ、更に調査を続けていきます。
それからはしばらく、日常的なやり取りが行われました。その日食べたものや、お互いの家族のこと、ペットのこと、仕事のことなどなど、ごく自然な会話でしたが、時折フローレンスが口にしていたのは、やはり自身が置かれている環境に対しての悩み。
街で爆発があったり、基地が攻撃を受けたりして、命の危険を感じながら日々を送っており、出来ることなら戦地を離れて生活したいと考えているが、契約が残っているためそうもいかない……といった感じで、ここでもさりげなく同情を誘ってきます。ナルホドーソレハカワイソーデスネー。