調味料の有料化の動き

 一般的な飲食店では、無料で提供する調味料やトッピング、添え物など、顧客が好きなだけ量を取れる食材のコストについて、今まではそこまで明確には考慮していなかった。「月トータルで食材・材料関係の仕入れがいくらあって、売上がいくらだから、材料費率は何%」といったように全体で数字を把握をしているからです。特に個人経営の店では、全体をなんとなくアバウトにしか把握していないところもあります。料理一皿あたりの材料費を計算し、それに基づき価格を決定しますが、料理に使用する調味料は計算に含めるものの、テーブルに配置する調味料までは考慮していないのが一般的です。

 ですが昨今の材料費の高騰や迷惑客の増加、栄養補給の感覚で大量に無料の調味料を使用するお客の増加で、無料の調味料の扱いに見直しが必要となってきています。材料費と材料費率が上がってくると、飲食店は価格を上げたりサービスを削ったりすることを考えます。加えて、迷惑客の行為がクローズアップされるなかで、いろいろ考えなくてはいけない状況になっています。

 有名なクラフトのパルメザンチーズ(粉チーズ)を例に計算してみましょう。1本80gで600円ほどで、お客が大さじ1杯分(約6g)を使用したとして、店側としては約46円のコストに相当します。1000円のパスタであれば約4.6%の材料比費に相当します。飲食店における材料費率の目安は30%なので、4.6%というのはかなり高い比率です。

 もし迷惑客がパスタ1品に粉チーズを1本使ってしまったら、店側は何かしらの対策を考えなくてはなりません。より安価な商品への変更や無料調味料の廃止・有料化という方法が考えられますが、実際に今ではトッピングとして有料化する動きが広まっています。

 すでに提供しているサービスをやめると客離れが起こる懸念もあるため、段階的な対策をとるケースもあります。まずは「告知」として、店内の張り紙や卓上ポップ、SNSを使って常識的な範囲内での使用を呼び掛けます。それでも材料費の上昇により厳しくなってきたら、料理の価格を上げるか、もしくは価格を据え置くことを理由に無料サービスを有料化します。

 原材料費の高騰や迷惑客の悪行がクローズアップされる今、飲食店にとっては、今まで変えられなかったものを変えるチャンスの時期でもあります。もし過剰サービス気味だと感じながらも変えられていなかったところがあれば、適正価格・適性サービスに移行するチャンスです。給料が上がらない、スタッフが集まらない、長時間労働、休みが取れないといった問題は、売上と利益が増えれば多少なりとも改善できる場合もあります。ぜひお客側も、そうした飲食店側の事情を踏まえて、調味料の有料化といった動きに理解を示していただければと思います。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

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