SBIが目指す地方創生の加速
今後、SBIは半導体、人工知能(AI)など成長期待の高い分野の企業との協業を増やすだろう。そうすることによって同社は、生産・開発拠点の建設に必要な土地の取得、建屋の建設、物流体制の整備などに必要な資金調達をサポートし、利鞘の拡大を目指すと予想される。
期待されるのは、半導体などの企業が拠点を置く場所を中心に、周辺地域の需要が高まることだ。熊本県菊陽町では、TSMC、ソニー、デンソーによる工場建設により土地需要が盛り上がった。2023年1月1日時点で、菊陽町光の森3丁目の県道住吉熊本線の路線価は前年から19.0%上昇(全国2位)だった。
工場建設によって人材の獲得競争は激化し、給料の増加期待は高まる。人の往来も増え、飲食、宿泊、交通などのサービス業の収益機会も増える。製造業、非製造業の両分野で産業が集積し、雇用、所得の機会は増加する。地方の経済は活性化し(地方創生)、資金需要は増加する。
そうした展開を狙ってSBIは、PSMC以外にも非金融分野の企業と資本・業務提携を増やした。2022年9月、飲食ビジネスなどを行うバルニバービ(本社、大阪府)との提携が発表された。2023年5月、島根銀行とバルニバービは地方創生事業の開始を発表した。金融ビジネス面でIT先端技術を積極活用してコストを削減し、事業運営の効率性を高める。一方、金融以外の領域では、成長期待の高い企業との関係、協業体制を強化する。その実現によって、工場や店舗建設の資金を融通する。雇用などの機会を生み出し地方経済の活力を高め、より多くの資金需要を生み出す。現時点でのSBIの成長戦略といえる。
ただ、成長戦略がどういった成果をもたらすか、先行きは楽観できない。世界経済、金融市場の先行き不透明感は上昇している。米欧での金融引き締め長期化によって世界的に株価が下落すれば、企業や金融機関のリスクテイクは低下し、投融資は進めづらくなるかもしれない。
日本の金融政策の影響も大きい。日銀は慎重に時間をかけて長期金利の引き上げを目指すだろう。一方、マイナス金利政策の解除は容易ではない。低金利環境は長期化し、SBIと提携する金融機関の収益力が低下する恐れも否定できない。そうしたリスクに対応し、収益力を拡充できるか否か、SBIの実行力に注目が集まるだろう。
(文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授)
提供元・Business Journal
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