資金需要の創出に向けた企業との連携

 また、SBIは、国内外の非金融分野の企業と関係を強化している。7月5日、同社は台湾の半導体ファウンドリ世界大手、PSMCとの基本合意を発表した。日本でSBIとPSMCは半導体工場の建設に向けた準備を進める。そうすることによって、SBIは資金の需要を増やそうとしている。

 PSMCは、日本の半導体産業との関係が深い。2006年、PSMCはエルピーダメモリと「レックスチップ」を設立した。合弁事業を通してPSMCは、かつて世界トップシェア誇った日本のDRAMの製造技術を吸収し、半導体部材や製造装置メーカーとの関係も強化した。それによってPSMCはメモリ半導体メーカーから、受託製造業への事業転換を果たした。主に台湾で同社は事業運営体制を強化した。現在、回路線幅28ナノメートル(ナノは10億分の1)以上、汎用型のラインで製造される車載用の半導体、メモリ半導体の受託製造の分野で世界第6位(SBI公表資料による)のシェアを獲得している。

 ただ、ここにきてPSMCは、海外進出を強化せざるを得なくなった。中国は台湾への影響力を強めようとしているように見える。日本や米国などは、あらゆる分野で利用が増える半導体の自国生産能力を強化するために補助金などの産業政策を強化した。また、今のところ、日本の自動車メーカーは世界トップの競争力を発揮している。地政学リスクに対応しつつ、より多くの需要獲得のためにPSMCにとって対日投資を実行する必然性は高まった。特に、解消されつつはあるものの、依然として車載用半導体の不足感は残っている。世界全体でのEVシフトなどを背景に、一台あたりに搭載される半導体の点数も増加する。デジタル化を背景に家電などに搭載される半導体点数も増える。

 SBIは需要の増加期待が高まる分野の企業との関係を強化し、資金需要の増加につなげたい。PSMCの投資が実行されれば、資金調達面でSBIが果たす役割は増え、業績拡大の可能性は高まる。資本・業務資本提携を結んだ地方銀行の融資機会なども増加すると予想される。