“雨の生き物”たち
南アフリカのウィットウォータースランド大学でロックアートを研究しているデイビット・ウィテルソン氏は、ユニコーンの岩絵を考えるうえで先住民の信仰に着目している。
南アフリカの教師、ドロテア・ブリーク氏は岩に描かれた一角獣はおそらくサン人の神話に登場する“雨の生き物”ではないかと示唆しているという。
“雨の生き物”はサン人の儀式、神話、芸術に頻繁に登場する生物で、彼らは四本足の生き物から蛇までさまざまな形態をとり、その中には一角獣の形態もあるという。哀しいことにこの“雨の生き物”たちは雨乞いの儀式の生贄とされて殺された。
ウィテルソン氏によればサン人にによって語られた物語の1つでは、“水の子”または“雨の生き物”の幼体は1本の角を持っているという。
サン人の間では思春期の少女はむやみに外出してはいけないしきたりがあるというのだが、ある少女はルールを破って池に行き、池で泳いでいる“水の子”を捕まえて焼いて食べた。これに味をしめた少女は再び“水の子”を捕まえようと試み何匹も捕まえたのだが、最後に捕まえた“水の子”の頭には1本の角が生えていたという。この角の生えた“水の子”が成長するとユニコーンになることが示唆されているのだ。