23区にイオンモールは来ないのか
東京、大阪の都心部ではイオンモールが台頭できないことから、今でも古いタイプのGMSは生き残れている。
「東京、大阪の都心部はマイカーではなく、バス、電車での移動がメインの方が大半であり、地方に比べて圧倒的に人の動きが多く集客を見込めるので、駅前GMSは生き残ることができています。商圏を考えたときも、地方がだいたい半径4kmとすると、都心部は1kmほどといわれていますので、そもそもの競争力が緩く、むしろスーパーにとっては好都合なんです。
ただ、それでも現状苦戦しているのが実情かと思います。現にイトーヨーカドーは、一等地に店舗を構えられているため集客こそできているものの、非食品分野で専門店チェーンとの競争に負けており、業績が下降気味となっています。先日、肌着を残してアパレル事業から身を引いたことに代表されるように、経営戦略の変更を迫られている状況なのです」(同)
大都市圏ではまだ生き残れているとはいえ、そのほかのエリアでは競争に敗れ去ったGMSは、イオンによって再編、もしくは吸収合併され新しく生まれ変わっている。それがイオンスタイルやイオンタウンと呼ばれる商業施設なのだという。
「ダイエーやサティが業績不振によりイオンに合併された後、かつて存在した都内のGMSの跡地はイオンスタイルやイオンタウンといった名称へと変更され、生まれ変わっています。イオンモールとの違いは、純粋に面積やテナント数です。かつてイオンスタイルやイオンタウンが引き継いだ店舗は、土地代が高く、面積も限られているので、イオンモール並みの大きさにはできませんし、大規模な駐車場を設けることもできないのです。神奈川県横浜市にある『イオンスタイル天王町』(現・イオン天王町ショッピングセンター元はサティ天王町)では、都市型のイオンスタイルにしては大型で話題となりましたが、やはり地方のイオンモールの規模には届いていません」(同)
たいていの買い物や用事は、イオンモールに行くだけで済ますことができる。地方暮らしでイオンモールの便利さに慣れてしまうと、都心部での買い物に不便さを感じる人もいることだろう。
「都心部には多種多様なお店が集まっているものの、イオンモールがある地方に比べると実は買い物しづらいかと思います。マイカー移動に慣れてしまっている方々からすれば、東京23区で電車やバスに乗って移動するのは面倒くさく感じるかもしれませんし、仮に車で行ったとしても駐車場が狭く、駐車料金が高いことから地方に比べ利便性は劣ります。しかも食品や日用品、薬、衣服などそれぞれ別々のお店に行かないと購入できない場合も多い。また先述したように都心部は競争が緩く、価格競争する必要がないので価格が高止まりしてしまっている一面もあります。
この点、イオンモールは食品を安い価格で提供できていますし、『トップバリュ』といったPB商品もリーズナブル。イオンとしては、競合のスーパーマーケットに勝つためというのはもちろんでしょうが、『イオンモールに来ればなんでも揃って便利でラク』というイメージをお客に定着させるように、低価格を実現しているのでしょう。イオンほどの大型店舗を運営するノウハウは、競合にはあまりありませんので、イオンモール一強といわれているのです。
ちなみに首都圏でも、『ららぽーと豊洲』や『ラゾーナ川崎』などイオンモール規模の大型ショッピングセンターはあるものの、駅近くに立地している影響もあり、混雑は必須なので車では気軽には訪れにくい。そして、これらの店舗は工場の跡地を再利用していることが多いため、大手デベロッパーが開発するケースが多いでしょう。ですから東京23区の都民がイオンモールを日常的に利用できる日は当分来ないかもしれません。もし23区内でイオンモールが出店できるとするならば、それこそ大規模な再開発が行われるときぐらいではないでしょうか」(同)
東京23区民が羨むイオンモールは、郊外ならではの事情で発展し、イオンの周到な戦略によって地方のニーズをガッツリ掴んでいる。もしかしたら、東京23区などの都心部よりも、イオンモールのある地方に引っ越ししたほうが日々の買い物は便利になるのかもしれない。
(取材・文=文月/A4studio)
提供元・Business Journal
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