サッカーが気候変動に与える影響を知ろう

では逆の視点で、サッカーが環境に与えている影響は何だろうか。ウェストン氏から飛び出した言葉は「カーボンフットプリント」の一言だった。排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの出所を調べて把握することである。

例えば「あなたがサッカーの試合を見に行く日を想像してみよう」と同氏。朝起きてから多くの人はパジャマから洋服に着替えるだろう。お気に入りのチームのユニフォームや、観戦に似合うファッションかもしれない。この行為の中で、まずはユニフォームを含む「服」を製造する過程で発生する温室効果ガスの存在に気づく。

次にスタジアムへ行くと思うのだが、ここでもどんな移動手段を選ぶかによって、温室効果ガスの排出量に大きな影響を及ぼすだろう。スタジアムに到着したら、チケットだ。デジタル化の影響を受けて紙のチケット利用は減少傾向にあるが、未だ存在している限り製造工程で排出される温室効果ガスについては、見ぬふりはできない。

ほかにも夜間の試合ではピッチを照らすための大容量の電力が使われる。マッチデーメニューの食事の製造過程や利用するパッケージなどからも温室効果ガスは排出されている。では具体的にどのようにして減らしていくのだろうか?

ルイスFC女子 写真:Getty Images

スタジアムでヴィーガン食にするとどうなる?

近年、環境に配慮したユニークな取り組みを実施しているサッカークラブが注目されている。例えばルイスFCは、1月21日にホームで行われたダラムウィメン(イングランド2部)との試合で、会場で販売するメニューを完全ヴィーガン食(完全菜食主義の食事)にする「Veganuary(ヴィーガニュアリー)」を行った。

一体、この取り組みのどこが環境に配慮されているのか。2016年に発表された英国オックスフォード大学の研究によると、通常の肉や魚などを含めた食事をヴィーガン食に置き換えると、温室効果ガスの排出を約70%も抑えられることが明らかとなっている。

つまり、サッカースタジアムで提供するものを徐々にヴィーガン食にしていくことで、たとえばプレミアリーグの試合に訪れた数万人から排出される温室効果ガスについて、かなりの量を抑えることが期待できるという訳だ。


2024年パリオリンピック 写真:Getty Images